- 2015.12.8
第173回MINERVAビジネスプラン発表会に参加。
― 今回は4社の発表でした。最初に?ワークソリューションの荻原氏から紫外線によるゴム手袋等の殺菌装置の説明がありました。既に多くの同類の製品が出回っていると思われますが、手首に着けたバーコードを読み取りWiFiで飛ばして殺菌履歴を自動的に収集管理できるところに工夫があると思われました。ただ、説明の有った感染経路を考えると手袋だけでなく作業服やマスク等の殺菌も重要で本製品以外でどのように対応するのかがポイントと感じました。次にエクイティ・エックス?の倉田氏から金融機関・公認会計士・税理士向等向けの企業価値・株式価値の評価ソフトのサービスの説明が有りました。この業界の付加価値は機械的な評価結果によるものではなく、多様なケースを想定したシナリオ作りにあるので、確かに便利では有ろうと思うもののユーザーがどのように評価するか興味のあるところです。3番目はエルステッドインターナショナル?の永守氏から米国で開発された7分間で身体の状況を判断する簡易健診マシンを使い、従業員の健康状態の見える化を行い、健康状態の改善を通した経営革新を図るという機械リースとソリューションサービスの説明がりました。最後に?エスペラントの木村氏から言語解析技術を基にインターネット上に溢れる情報を整理して外国人観光客向けに日本のホットな商品情報を届け、店舗に誘導するアプリ等のサービスの説明がありました。後半2社については、サービスの説明に止まるところがあり、どのように事業展開していくのか、良く理解できませんでした。
- 2015.12.4
日本開発工学会第3回技術ベンチャー叢成ワークショップを開催。
― 第3回のワークショップは、公益財団法人神奈川科学技術アカデミーの理事長である馬来 義弘氏に「「勝ち組」ベンチャー・中小企業の実現を目指して」とのタイトルで講演をお願いしました。馬来氏は、日産出身で神奈川県産業技術センター所長、中小企業基盤整備機構・新事業支援部プロジェクトマネージャーを経て、現在の職にあり、製造業分野の大企業とヴェンチャーとの関係、技術指向中小企業、先端技術分野の大学とヴェンチャーと大企業との関係等、大学の研究から始まってヴェンチャーが生まれ出口を求めるまでの一貫したプロセスを経験した立場から、技術開発指向ヴェンチャーの叢出と育成の課題とその解決方法について話をして頂きました。特に日本の大企業に身を置いた経験から、グローバル競争下で閉塞感に陥っている多くの日本の大企業にとってヴェンチャー等の外部の資源を有効に活用し共に発展するオープンイノヴェーション以外の選択肢はもうないこと、しかしながら大企業とのオープンイノヴェーションの方策を求めるエネルギーと時間よりも地方創生の観点から地域の中堅オーナー企業とのオープンイノヴェーションを模索する方が効率的効果的と思われること、地方・地域の観点からは地方銀行・信用金庫がヴェンチャーへの融資等で差別化を図り自身の淘汰にも勝ち抜ける可能性のあること、などの指摘がありました。参加者との討論からは、地銀等とVC業界との接点を高め組織的な人材交流の取組み、地銀の持つ中堅オーナー企業に関するノウハウを活かしたヴェンチャーの潜在顧客探しの実例など浮かび上がり、更に、地銀・中堅オーナー・ヴェンチャーが組んで地域で先端技術による雇用創出を図る場合の政策的支援策の提案もされました。
- 2015.12.3
ISID開発の見える化フォーラム2015に参加。
― 「先進企業の取組み事例から考える製品開発の革新」との副題が付され、ISID社のiQUAVIS製品を使った3社から事例発表がされました。最初のヤンマーとニコンの事例からは何が課題で何が解決され何が解決されないまま残り、それに同社の製品がどのように関わっているのか理解できませんでしたが、3社目のコニカミノルタの鈴木氏から、製品の性能と開発を決める要素(要因)と特性の関係を示す二元表を基に、何を変更すればどの要因と特性に変化を及ぼすかを見極め、さらにそれをトヨタ自動車によって確立された体系的なFMEA(Failure Mode and Effects Analysis)の運用方法であるDRBFM(Design Review Based on Failure Mode)を使って検証優先度を設定して検証項目リスト計画を作成するとの説明を聞いて、やっと想像が付くようになりました。二元表を作るには顕在・潜在的知見を関連付けて整理し極力完全なものとしないといけませんが、これが前2社が言っていたデータベース化とか見える化のことのようです。同社鈴木氏の説明でも、既存概念の製品と既存技術の範囲での管理になる訳で、根本的な原理の変更や既存概念外の製品を対象としてどう開発をマネジするかの疑問がでてきましたが、これに対しては最後の講師である元マツダの羽山氏が回答を与えていました。同氏の問題提起の根幹は、モノゴトの原理原則に立ち戻っての機能分析を行い、諸機能の関連性を明確にした上での“カラクリ”を数式化してモデルを作る努力を続けることで、未知が見え新しい二元表的な世界(あるいは数次元的世界)が開けるということだと理解しました。徹底した原理原則に戻っての数式化を図ることで、物理的な試作ではなくシミュレーションが試作に代替するというのが結論で、途中で退席することなく最後まで話をお聞きした甲斐があるとともにマツダの復活の原因も垣間見た気がしました。
- 2015.11.20
日本開発工学会第2回総合シンポジウムに参加。
― 昨年に続き、各研究会を束ねる位置付けとして「ヨコ展開の進化−新たな結合による価値創造」のテーマでシンポジウムが開かれました。技術ベンチャー叢成ワークショップを本工学会の傘下で開催していることもあり、本シンポのプログラムの一部として、技術開発指向型ヴェンチャーが何故我が国で育たないのか、何が欠けているのかを明らかにしようとするワークショップの狙い等について簡単なプレゼンをしました。直前に?PALTEKの高橋会長から、工学会の前会長の中上さん等の支援を得て会社を立ち上げ上場に至る苦労話とヴェンチャー企業を取り巻く現下の諸問題について話があり、また、直後には若手のヴェンチャーとしてエヴィクサー?の瀧川社長から、音認識技術を活用した事業展開の話が有りました。?PALTEKは電子部品事業からエネルギー制御事業、非常電源システムへと事業を展開し、ITよりは製造業に近い分野で事業を行うヴェンチャーで創業30年、エヴィクサー?は複数の関係者を巻き込んでシステム化していくIT分野の事業を展開している創業10年の若いヴェンチャーですが、背景と歴史は異なるもののワークショップで取り上げようとしている問題意識に共通するところが多々あり、基本的にはワークショップの活動に賛成を得られているものと感じました。
- 2015.11.14
早大モビリティシンポジウムに参加。
― 同大の大聖教授が代表をされている早大モビリティ研究会主催のシンポの午後の部に参加しました。日産の福島氏からの高度運転支援と自動運転の取組み、トヨタの吉原氏からの顧客満足を実現するためのパワートレインの考え方についての講演のあと、フランスIFP(Institut français du pétrole)のDuret氏から電気自動車の走行距離を伸ばすための小型2サイクルエンジンの応用についてプレゼンが有りました。環境に負荷を齎さずにホンダの125?小型ガソリンエンジンを使って発電しこれを蓄電して走行距離の延伸を実現したとの説明でした。会場からは電気自動車の目指す環境負荷ゼロと矛盾するのではないかとの否定的な質問が出ていましたが、発想を変え利用可能な技術をうまく組み合わせて環境負荷を抑える移動手段を実現していくことは、大いに意味のあることであり、しかも日本メーカーのガソリンエンジンを使っていることに喜びを感じました。コマツの中野氏からは、GPSによる位置情報と稼働状況情報を利用した建機のメンテサービスKOMTRAXを超えて、土木工事の現場を、オペレーターに図面をもとにした3Dの仕上がり図を送信するとともにオペレーターに作業手順を自動的に遠隔指示することで、未経験者でも効率よく作業できるIT利用空間に変え、工場内部での工程管理と同等のものにするICT建機SMARTCONSTRUCTIONのソリューションビジネスの紹介がありました。土木現場が3Kでなく最先端を行く職場環境となることを期待したいと思います。
- 2015.11.10
第172回MINERVAビジネスプラン発表会に参加。
― 今回は3社のプレゼンを聞きました。最初に、ミッションクルー?の山下氏から、中小企業の経理数字に関心の薄い社長向けにスマフォで試算表や売上げ等の数字を見える化しグラフ表示して提供するサービスの説明が有りました。そもそも経営状況に関心のない経営者にスマフォで経理情報を提供して経営に対する関心と責任が高まるとは思えませんが、同氏のプレゼンはサービスの動画説明が主で、どのように顧客を獲得し売上げを伸ばして行くのか肝心の説明は有りませんでした。次に、?エクストの高畑氏から、長らくサイボウズがトップにあった情報共有ツールがLINEに置き換わりつつある中で同製品のセキュリティ問題を解決しこれに代わる情報共有ツールであるクラウド型タスク管理ツールSONR.(ソナー)の説明が有りました。同時にこれをどのように国内外で販売を掛けて行くか、自社の開発体制をどのように強化して行くかの中期計画が示され、かつ、これの実現を担保するものとして同製品を活用している社内状況を併せて説明していました。非常に手堅い手法で確実さを感じさせられましたが、認知度をどのように高めて行くか、大口・大手ユーザーをどのように獲得していくかに、もう少し具体策が欲しいと感じました。発展を期待したい企業でした。最後に、ナノデックス?の服部氏から、従来の抗癌剤のように癌細胞のDNAを破壊するのではなくミトコンドリアを分解することで副作用や多剤耐性を避けられるFA-M-β-CyDのオートファジーメカニズムの説明が有りました。同社については、NEDOの委託制度の利用に併せてNEDO認定VCからの資金獲得を図ろうとするプレゼンを聞いていましたので2度目ですが、やはり認定VCからの資金獲得が難しいためにMINERVAでもプレゼンをしようとしているのかと疑問を持ちました。実験データも揃いつつありそれなりに説得力があると思いますが、何か課題が有るからかもしれません。
- 2015.11.6
モノづくり“日本”の産業革命へ〜IoT/カスタマいぜーション時代の到来を迎えて〜に参加。
― ダッソー・システムズ社が実質主催のセミナーで、ドイツにおけるIndustry 4.0やIoTが日常的に語られるようになった中で、我が国の製造業がどう対処していくべきかを議論することを狙いとするセミナーと理解しました。主催者のダッソー・システムズは、その有する高度な3Dキャドやデザインソフト、シミュレーション技術をベースに、製造業のみならずサービス業などのSCプロセスの自動化を入口から出口まで押さえているフランスの企業ですが、同社がドイツにおけるIndustry 4.0や米国GEのインダストリアル・インターネット、IBMのワトソンのようなビッグデータ・マイニングとAIなどの動きを見て、我が国の製造業の将来を心配し、世界の流れはこうであり、我が国としてはこのような可能性がある、ということを示そうとしてくれているセミナーと思える内容でした。最初に、経産省の担当課長から「ものづくり白書」で示したIoTの考えについてのプレゼンが有り、その後、ローランド・ベルガー社から日本の製造業の底力を発揮できる日本版Industry 4.0の提案がありました。まず、このような問題意識のセミナーが、プラットフォーム・ビジネスを提供する日本企業の主催でなく、かつ、あるべき解が日本型Industry 4.0であるという議論に収斂していくところに寂しさを感じました。要するに、ドイツのIndustry 4.0は、単独業種の垂直間を情報をスムーズに流すことと同時に複数業種、異業種間を同じく情報がスムーズに流れるように標準化を進めるとともに、その情報を最大限活用して、単に個別の顧客向けのカスタマイゼーションを実現するだけでなく、集積される情報を公共財として個々の企業が活用できるようにしようとする欧州のみならず世界市場を狙った戦略があることに気付くべきですが、そのような戦略に対するアンチ戦略を如何に創っていくかの視点が無いまま、日本型Industry 4.0はこうなるのではないか、日本型IoTの利用方法はこうでないか、と議論をしている感を2人のプレゼンから感じたということです。しかしながら、このようなセミナーを主催したダッソー社の懐の深さと実力に改めて敬服した次第です。
- 2015.10.28
TEP主催TECH STARTUP SUMMITに参加。
― 日本開発工学会技術ベンチャー叢成ワークショップと全く同じ問題意識を背景に、TEP、特に村井 勝氏が初期から支援をしてきた東大発ヴェンチャーで小型衛星打上げとその利用を進めるアクセルスペース社を中心に、同社のリードインヴェスターであるグローバルブレイン社等の関係者が参加して、技術系ヴェンチャーの支援育成をめぐる課題を議論するシンポでした。最初にアクセルスペース社の中村 友哉社長から、学生時代におけるロケット打ち上げと小型衛星開発の関わり、ウェザーニューズ社の石橋社長との出会い、グローバルブレイン?パートナーの青木氏との出会いと衛星をプラットフォームとして提供する事業モデルの変更等の話が有りました。青木氏は大学で宇宙工学を先行し大企業に就職後、同社にパートナーとして参加した経歴を有し、非常に数少ない宇宙ビジネスを理解できる者であろうと思われます。グローバルブレイン?はHPで見る限り対IT系、携帯関連ヴェンチャーへの投資がメインのように思われますが、アクセルスペースへの投資でVCにも変化が生まれていることに触れていました。しかしながら、同社の事業を海外企業に持ち込むと反応が速いのに対し国内企業は反応がないこと、グローバルブレインの投資も同社の海外ネットワークの影響があるように感じること、衛星の打ち上げは相変わらずロシアのロケットに依存せざるを得ないこと、などを聞いている限り、ヴェンチャーは海外事業を展開してから国内に戻った方が評価されやすいという従来のセオリーを大きく変えるものでもないようでした。村井氏からは、技術系ヴェンチャーの重要性に触れつつ、同社の衛星の打ち上げにロシアのロケットを使わざるを得なかったことから、制度の壁や文化の壁を乗り越える必要性を改めて強調していました。
- 2015.10.23
アーネスト育成財団技術経営人財育成セミナーに参加。
― 日本開発工学会のネットワークで案内を頂いた勉強会に参加し、北陸先端科学技術大学の小坂氏から「サービスの重要性」とのタイトルで、経済のサービス化の進展段階としての製造業のサービス化、インターネットによって齎された新サービスの登場に続く、オープンイノヴェーションや顧客と財の提供者との共創を代表とする最新の段階であるService Dominant Logicの動きについて話を聞きました。IOTやBig Dataなどに表されるように財の出し手、受け手の境界が無くなり双方がインターネット等を通して共存し合う共通の場に双方のリソースを持ち込みリソースを統合して価値創造を行う新しいサーヴィスビジネスモデルが生まれているという趣旨だと理解しました。シリコンヴァレーで日常的に起きていることは将にこれそのものであり、起業者や資金提供者、買収者、スタンフォード大学等がシリコンヴァレーに集まりイノヴェーションという価値創造活動を行い、併せて貨幣的な価値も増大させていくビジネス活動が現に起きている訳で、誰がサーヴィスビジネスモデルの主体とは言えず従ってハビタントということとなりますが、その類似性と先進性に改めて思いを致した次第です。となると、我が国のように、制度・組織・文化が縦割りでそれぞれが閉じており、その閉鎖的な存在の間の調整を「擦り合わせ」と称して有り難がっている経済社会では、この第三世代のサービスは生まれず、またまた大きな潮流の変化に置き去りにされていくのではないかと早々と危惧しています。
- 2015.10.22
NEDO Technology Commercialization Programピッチコンテストに参加。
― NEDOが主宰して起業側とVC等との接点作りを目指し、起業者によるビジネスプラン発表のスキルを高めるとともにVC等に訴求させる場で、NEDOの事業カタライザーに登録をしていることもあって、開催の案内を貰い参加しました。東京会場では、電子・医薬・ITなどの研究開発指向の起業者20社が順次プレゼンをしていました。個別には触れませんが、予想通りこの分野での起業者が必要としている資金は5千万から1億までの間で、果たしてこの真摯なニーズを受け止めてテイクオフを支援するVC等が存在するのかどうか改めて疑問を持ちました。ニワトリ・タマゴの関係であることは重々承知していますが、幾らこのような場を行政機関が提供しても、起業家が離陸するリスクを受け止めていける資金提供者が存在しなければ意味が無く、米国式のピッチではこうだとかシリコンヴァレー風のプレゼンの遣り方がどうとか助言している審査員にとっても、まだ先に遣っておくべきことがあるのではないかとの感を強く持ちました。
- 2015.10.20
JST東京電機大学新技術説明会に参加。
― 久しぶりに新技術説明会に参加しました。最初に未来科学部の井上氏から片麻痺患者が一人で安全に杖歩行訓練ができる歩行補助器の開発について説明がありました。現場のニーズを踏まえ実際に病院で利用実験を行って開発した機器で、保険等で導入のメリットが組み込まれると普及が進むと思います。 次に工学部の吉田氏から、大量・高頻度・長時間の計測に際しタッチパネル部品を使って計測数値を自動的にPCに記録するタッチ式メジャーの説明がありました。 3番目に情報環境学部の鈴木氏から、通信のパケットやGPS信号に追随できる高速の秘密鍵暗号技術の説明がありました。まったく知見の無い分野ですので良く分かりませんが本当だとすると極めて革新性が高いものだと思います。評価できる者は限られている世界なので評価自体が固まるのは早いと思います。最後に工学部の栗栖氏から、2つの固定永久磁石間で一つの可動永久磁石をモータによりスライドさせ、可動磁石が固定磁石に吸着する際に発生する衝撃力を利用して装置を跳躍させる技術の説明がありました。本技術は既にはやぶさ2搭載小惑星探査ロボットに利用されており、これを地上での小型レスキューロボットや打音検査機器に応用させていきたいとの考えに基づく説明でした。4件とも電機大学らしい技術で実用化には近いと思われる反面、まだ本当の実用化には企業との共同研究が必須であり、解決されるべき課題はまだ多いと感じました。
- 2015.10.13
第171 回MINERVAビジネスプラン発表会に参加。
― 今回は4社の発表で総てIT系のビジネスプランでした。最初は、?イノベーションの富田氏からBtoBマーケティングを変革することを狙いとした同社のサービスの説明がありました。次に?TCSIの田口氏から、機密情報等を乱数化して分割保管し分割分が全部揃って初めて元の情報を再現することで安全に社外に持ち出しができるサービスの説明がありました。3番目に?電子署名認証の青木氏から企業における経験を活かした文書の電子化等のコンサルサービスの説明がありました。4番目に教育図鑑?の矢野氏から進学希望校等の適切な情報をHPに掲載させることによって進学希望者等と進学希望校等とのマッチングの円滑化を図ろうとするサービスの説明がありました。いずれも類似サービスが多数ある中でユーザーにどうアクセスしていくのか難しい内容だと思いました。
- 2015.10.1
日本開発工学会第2回技術ベンチャー叢成ワークショップを開催。
― 第2回のワークショップは、株式会社TNPパートナーズ代表取締役社長でNPO法人ベンチャー支援機構MINERVA副理事長の呉 雅俊氏から「オープンイノベーション〜技術開発型ベンチャー企業に焦点を当てた独立系VCの活動〜」とのタイトルで講演を願いました。現在の我が国のような成熟社会は、知恵を活かしリスクをマネジし成長を実現させることを基本として、ヴェンチャーを育て関係者がその成長の成果を共有する「育てる資本主義の時代」であり、VCがその金融の面での担い手となるべきであるとの基本認識を示した上で、技術開発指向ヴェンチャーを支援し育成していく可能性の増大要因として、一つは、自社内外のイノヴェーション要素を最適に組み合わせて(mix & match)、製品開発までに要する時間(time to market)を最大限節約し、併せて、自社の持つ未利用資源を積極的に外部に切り出し社会のイノヴェーションの効率を最大化するオープンイノヴェーションの進展、二つは、製品をモジュールに分割し組み合せることでヴェンチャーがモジュールの開発にチャレンジできるチャンスが増えて行くインテグラル型の産業構造からモジュール型へのパラダイムシフトの進展、を指摘していました。更に、資金対策でありマーケット対策として、優れた技術を持つ我が国ヴェンチャーを、韓国製造業の開発力・量産ノウハウ・経営力、台湾製造業の人脈・販売力・経営力、韓国・日本・台湾のグローバル企業の指導力を活用してグローバルな市場に飛躍させる目的で、韓国のサムスンベンチャー投資等、台湾のエイスース等、日本のオムロン等、中小企業基盤整備機構等の出資を得て立ち上げた「TNP中小企業・ベンチャー企業成長応援ファンド」の紹介がありました。最後にイノヴェーションを担うヴェンチャーへの投資は社会資本への投資であると位置付けることで、単なる短視眼的な金儲け的VC活動からの脱却の可能性と飛躍を強調していました。
- 2015.9.28
第3回GPICシンポジウムに参加。
― 今回はグリーンパワーICの事業化のためのビジネス戦略に不可欠なヴィジョンに焦点を当てるといのがテーマでした。最初に東北大の大島氏から特許情報に基づく開発動向について話がありました。次に東京大の阿部氏から再生エネルギーの地産地消を進めて行くうえで不可欠のデジタルグリッドについて話が有りました。再生エネルギーを分散電源として導入をしていくためには周波数・電圧の制御、複数インバーターの同期、需給の同量制御等を実現することが必要で、これをディジタルグリッドとして従来の電力送電網から自立させてグリッド内で実現しまた必要に応じて既存電力網に接続することとし、同時に現在求められている既存電力会社の基幹送配電網に接続するための送電線の新設を無くそうという狙いであると理解しました。最後に筑波大学の只野氏から、自動車内部での情報処理や外部との連携が具体化している中で耐高温性等に優位性のあるSiC系パワーデバイスについて、Si系半導体をSiC系半導体に置き換えることに併せて全体のシステムの変更(あるインバータを導入することで期待電流の発生電圧の誤差変動を小さくする)を行い全体としてのエネルギー効率を高めて行く複眼的発想を説明していました。阿部氏のプレゼンは、来年からの電力システムの改革によってドイツで実現していることが漸く我が国でも具体化しようとしている中で、株式会社デジタルグリッドの創始者として事業化に取り組んでいることを背景にしてのプレゼンであったと思います。
- 2015.9.8
第170 回MINERVAビジネスプラン発表会に参加。
― 今回は3社の発表で、最初は、?テンダから同社の主力製品であるマニュアル作成等のソフトであるDOJOの説明がありました。同社のMINERVAでの発表は2回目と思いますが、デモ事例が前回と同じ「駅すぱあと」を使ったもので、何か他の小売りでも製造ラインでのマニュアル作りのデモをして欲しかったところです。次は、創業直後で社長一人の会社である西風技研?の西浦 信一氏から、発電部分を切り離し、風力・波力をPPケーブルで伝達する水平運動エネルギーに変換し、別置きの発電装置に伝えて発電する小型・軽量発電システムの説明がありました。まだ概念的なところが多く面白い発想とは思いましたが評価できるところまでには至っていませんでした。最後に?エフ メディコ エンジから、ナノインプリント技術により製造コストを低減した測定用チップを使うと同時に測定精度向上と低コストを同時に実現した新機構の液粘稠度測定装置による血液粘稠度測定システムの説明がありました。これも特許出願中の故か詳細は不明で評価できないものでした。後二者は個別に支援申し出をした相手には開示して行くのかもしれませんが、最初のプレゼンも含めて些か消化不良の感のある発表でした。
- 2015.8.28
イノベーション・ジャパン2015に参加。
― 全く久しぶりの東京ビッグサイトでした。NEDOとJSTが主催し大学・公的研究機関発の技術、NEDOが関与した民間企業の技術等を紹介するもので、入場者は多かったですが、果たしてユーザとなりうる大手企業等の担当者がその中でどのぐらいを占めたのか、心許無い感じもしました。大学・公的機関発の方は、極めて多種多様なアイデアが製造業等で使われるようになるまでどれぐらいの死の谷を越えるべきか、道遼遠の印象をやはり持ちました。他方、NEDO関与の技術の方は、ベンチャー企業の製品等として一応の形になっている訳ですが、ユーザが評価するまでには今一段のスケールアップとユーザとの橋渡しが必要なモノが圧倒的であると感じました。21世紀の我が国の製造業の裾野を維持・強化し続けないといけないとの思いと、展示会の現実との距離を改めて感じた次第です。その中で、唯一出展者と話をしたのがオーバートーン?のUML to RTL Technologyという組込みソフト等の開発を効率化し、工数負荷の低減に繋げるソフトに関してで、我が国がこれから進めて行こうとする医療機器や各種ロボットのような個別特定領域で必要となるLSI等の開発や組み込みソフトの開発を、経験や知識が乏しく層も薄くかつ数も限られているエンジニア等が進めるに当たって必須なモノだと思いました。ベンチャー・中小企業に取って必要なだけでなく、上場大手企業の内部開発体制もこの20年間に空洞化し、重要な開発部分を下請け等に外注して済ませるようになってきている傾向にあり、このようなツールを使ってのシステマティックな開発を行わない限り、別の意味で21世紀の我が国の製造業の裾野は維持・強化できないと考える次第です。
- 2015.7.16
日本開発工学第1回技術ベンチャー叢成ワークショップを開催。
― 第4次ヴェンチャーブームと言われ、若い世代の起業も珍しくなくなり、特にアプリ開発の分野ではIT分野の技術革新による起業に必要な資金の少額化、大手携帯電話会社等による起業を後押しするハード・ソフトインフラの提供等によって、バブル的な色彩を帯びて来ているとの声もあります。しかしながら、本場シリコンヴァレーにおいてDeep Tech Startupsと呼ばれ製造業回帰の動きが見られるのに反し、我が国の製造業・医薬・ロボット・エネルギー等技術開発型ヴェンチャーを取り巻く環境には変化が無く厳しい状況にあり、これらのヴェンチャーは、試験装置・試作装置・実証装置等と段階を踏んで実用化を目指して行く過程で多くの死の谷に遭遇せざるを得ない状況にあると考えています。なぜ日本では技術開発指向ヴェンチャーが育たないのか? どうすれば育つのか? 何が不足しているのか。これらの問題意識を共有できる、ヴェンチャー支援者やヴェンチャー支援機関の実務者等の実務家との意見交換から上記の方策を抽出し、出来れば政策提言としたいとの問題意識で、関係者の協力を得て日本開発工学に技術ベンチャー叢成ワークショップを立ち上げ、議論を進めて行くこととしました。初回は、元コンパックの会長で、一般社団法人TXアントレプレナーパートナーズ(TEP) 前代表理事・最高顧問である村井 勝氏から「我が国のエンジェル活動を総括する−起業家と市場をいかに繋げるか−」とのタイトルで講演を願いました。官民の数多くの諸提言に抜けている「産官学のそれぞれの組織文化を打ち破り、複視眼的視野を持てる人材を育て、人と人とをベースとした交流を進めること」が最大の課題であり、米国のパルミサーノ・レポートの原点に戻るべきだとの基本認識の上で、産総研からの技術移転における官意識の問題、東大発ヴェンチャーが小型衛星を国産ロボットで打ち上げる際にぶつかった官民の壁、TEP支援のヴェンチャーを大企業に紹介した際に遭遇した大組織中心の発想、などの多くの具体的事例の紹介がありました。また、技術開発の方向性が偶然に左右され過ぎる、試作技術と量産化技術との根本的な差を認識できていない等製造業系の技術開発型ヴェンチャーに特有の問題もあることを指摘され、本ワークショップでは多くの視点からの検討が必要であると感じました。同時に、TEPの活動と我が国では少ないエンジェルのハンズオン支援の紹介もあり、エンジェルの層をどのように厚くし、TEPのようなネットワーク組織をどのように増やしていくべきか、に一つの解があることを示唆していました。
- 2015.7.14
第169回MINERVAビジネスプラン発表会に参加。
― 今回は4社の発表で、最初は、カプセルウェア?の安井氏から、人的ミスによる情報漏えいを防止する対策として、PC内に管理作業空間を設定してその内部でのみ作業できるようにし、無償ソフトをダウンロードして同様に管理作業空間を設定した送付先PCにおいてのみ送信した暗号内容が解読されるようにするCAPSULE-WAREの説明がありました。ほぼ1年前に本発表会でプレゼンをした?クリエイターズ・ヘッドが分社化して本ソフトのサービスに特化したものとのことでした。2番目には?DG TAKANO高野氏から高度の切削加工技術を基本にして開発した超節水洗浄ノズルBubbke90の説明がありました。普通の水道蛇口に取り付けられ水道水圧のエネルギーだけで"脈動流"を産み出せ90%以上の節水が実現できるため飲食業界を中心に普及し、水資源の乏しい海外からも引き合いがきているとのことでした。3番目に?Andeco早川氏から、都市再開発に伴って大手のチェーン店のみが入居した特定エリアを除いて人の往来がなくなった空間に小規模な飲食・物販の出店を行い賑わいを拡げようとする目的で、移動販売者向けに場所づくり、インフラ設置(電気、水、WIFI )、スマートフォンアプリなどの必要なツールをワンストップで提供するプラットフォーム事業の紹介がありました。モジュールとして車よりも小さなバッテリー付きカートを開発し衛生面での規制をクリアし、更にこれらを複数組み合わせて地域ミニマルシェを実施していこうとする面白い取組みでした。最後に?ZEエナジー松下氏から、バイオマスガス化発電やバイオマスメタン発電、ゴミの炭化装置を長く手掛け、山村地域との連携やハウス農家との連携により小型のバイオマス発電を全国展開しようとしている現状と、スリランカに製造拠点を設けて東南アジアにおいても同社の技術の導入を図ろうとする動きについて説明がありました。今回の4社の分野は様々でしたがそれぞれがユニークな特徴を有するベンチャーでした。
- 2015.7.3
第8回大田区加工技術展示商談会特別講演に参加。
― 本田技研工業株式会社四輪事業本部スマートコミュニティ企画室主任技師岩田 和之氏から「ホンダ FCV・MEV技術とエネルギーマネジメント」と題する講演を聞きました。最初はホンダの技術開発の話かと想像して参加しましたが、欧州で現実に求められているCO2削減対応が必然的に水素燃料自動車や小型EVの市場投入に向かわせ、そのために単品としての新型自動車の開発だけではなく、面での再生エネルギーインフラの整備にも取り組まざるを得ない状況にあることを柱とする講演でした。欧州の求める規制は確実にガソリンエンジン車をゼロとし、化石燃料由来の電気を使うEVをも許容しない厳しさであるとのことですが、トヨタのFCVも同様に、欧州という大市場でビジネスを継続していくためには、我が国では明後日のように思われているFCVの市場への投入が直ぐ明日の課題であることがよく分かる講演でした。
- 2015.6.30
富士通総研中国通セミナーに参加。
― 「迷走する中国経済の行方」とのタイトルで、富士通総研主席研究員柯 隆氏からの講演を聞きました。インフラ投資に代わるべき個人消費が経済をリードできない状況の一方で供給面では知財の保護が不完全なままでは真のイノヴェーションは生じえない構造にあること、その中でマネー供給は増えているため資産バブルが株式バブルに移行してその株式バブルも弾けたこと、元高や賃金の上昇でコスト増が生じる一方で個人消費等の実需が弱いのでデフレに入っていること、等経済の現状について説明がありました。政治面では、毛沢東への回帰、経済の自由化の推進、これらの矛盾を覆う民族主義の強化というリスクの高まりを指摘し、政治と適当な距離を置くことを助言していました。印象に残った指摘としては、AIIBの創設に関して、AIIBの様な国際機関が真に機能するためには、傘下に入る国際的なエコノミスト達がインターネット等で自由に必要な情報にアクセスでき、分析の成果を自由に発信することで国際的な信頼感と存在感を高めて行く必要があるが、それが中国・北京に本拠を置くことで実現できるか極めて疑問であるとの点でした。他方、中国の政策立案については、極めて広範で他部門に亘る政府調査機関(シンクタンク)の戦略・政策作りの能力の高さへの言及があり、AIIBでの指摘と少し矛盾する感を有しましたが、米国の多様な能力の高いシンクタンクの存在を考えると、我が国では多様で活力のある官民のシンクタンクが欠如しているとの思いに至りました。
- 2015.6.9
第168回MINERVAビジネス発表会に参加。
― 最初の発表は、Coaido?の玄正氏から、スマートフォンの位置情報を活用し、心停止者の発見者がSOS発信をすると周辺の登録救命ボランティアに駆付け要請と最寄のAED設置場所を知らせるシステムの説明がありました。京都大学との共同研究を進めるとともに、複数自治体(消防)との協力により119番通報を受け自動的に登録ボランティアに最寄のAED設置場所を合わせて知らせる実証実験を開始したとのことです。2社目は、?スサインクの林氏から、大学病院勤務医や開業医としての歯科医療30年間の経験に基づき、C型肝炎の減少を目的としてPC操作の衛生面に着目した滅菌可能な手術用PCマウスを開発した説明がありました。3番目は?MIAの守屋氏から、軽量高強度の構造として建築、自動車、宇宙ステーションなど広い分野で利用されているスペースフレームの開発の経験を基に、CFRP(炭素繊維強化プラスチックパイプ)スペースフレームを使った空輸用ドローンの事業化について、詳細な強度・重力・浮遊力・運搬力等の計算と合わせて説明がありました。前2社はソーシャルベンチャー的な動きで、パブリックな機能(大学・自治体・病院)と連携しながらの足が地についた進め方と思いました。最後のドローンについて、開発だけでなく今後のドローンの飛行規制の姿を前提に山村・離島等での利用形態を想定しての説明に驚きましたが、うまく人口減少・高齢化等を受けた自治体との連携等ができるかがポイントと思います。やはり、我が国ではソーシャルベンチャー的な指向が必要と考えました。
- 2015.6.2
Smart Korea Forum in Japan 2015に参加。
― 恒例のKOTRA(大韓貿易投資振興公社)主催の展示会と講演会で、韓国IT事情を知るには役立つ場として感謝しています。今年は時間の関係で講演を2つだけ聞きました。最初に?DINOPEOPLEの河代表からBeaconを活用した顧客へのオンライン即現場での勧誘情報の提供、簡易モバイル決済等のサービスの紹介がありました。次にDREAM PARKS?の盧氏から韓国Immersive Korea社のGeo-Fencingサービスの紹介がありました。情報提供側が設定した地理的空間に所在するアプリ搭載済みスマートフォンユーザに、個人の位置情報を収集せずに災害情報やイベント情報等を送信するもので、2018年の冬季オリンピックでの採用が決まっているとのことでした。最近のキーワードはIoTに加えてO2O(online to offline端末センサー情報を使って人を誘導させる)のようで、東京オリンピックに向けて多くの外国人来訪者への情報提供に、グローバルなプラットフォーム上でのスマートフォン利用が進むようです。どのように我が国の若い会社が奮闘していけるか関心を持つところです。
- 2015.5.28
第8回トポス会議/事前勉強会に参加。
― 非営利研究組織「ワールド・ワイズ・ウェブ・イニシアティブ」(略称w3i)、富士通総研等が主催するトポス会議の事前勉強会として、トポス会議の登壇者の内から2名の講師がIoT、Wearable Technologyというテーマで半日プレゼント討論会を行うという贅沢なオープンの場でした。最初に SAPのシニア・ヴァイスプレジデントのグルプラサッド・シュリニヴァサムルティ氏が、およそあらゆるモノが、情報を感知し送信するセンサーによってインターネットを通して繋がる近未来の世界を描写しました。情報が組織や国境を越えて動き回ることで、従来の紀律とぶつかることとなりこれにどう対処すべきかと言う大きな問題もありますが、同時に、インド出身の技術者がドイツのSAPで長く活躍し世界の変動を先取りするシリコンヴァレーに滞在して我が国等で講演して回るというようなグローバルなタレントの存在もIoT的社会の側面かと感じました。次にシーメンスのCTOやフィリップスのチーフ・ストラテジー・オフィサー等を経験したハリー・ストラッサー氏から単にWearable Technologyの技術的な説明だけではなく、身体と一体となった各種センサーを利用することで健康・医療等のセクターが一体となるようなパラダイム変化とこれを可能とするセクターや組織の壁を打ち破るスマート・パートナーシップの必然性を指摘していました。現在、再生エネルギーの活用や中堅製造業の成長、Industrial4.0の製造業の変化等多くの点でドイツとの比較の議論が出て来ていますが、我が国大企業経験者で世界で問題提起できる論者をどう生み出すべきかとの比較論も必要と考えます。
- 2015.5.20
第12回GPIC研究会に参加。
― 今回は、富士電機?特別顧問重兼 壽夫氏から、長くパワートランジスタの開発に携われた苦労のお話がありました。単体のデバイスの開発ではなくそれを使用するパワーエレクトロニクスのユーザ技術者と共同で事業化を進めるべきで、ユーザ側にもメリットを与えるソリューションを提供することの重要性、高性能で結果的に高価格となる新規商品を投入する際には従来製品が戦っていた土俵から離れ次元を変えて複合的価値(システム価値)を訴えていく重要性(アップル同士の戦いではなく、異種のオレンジの登場であると主張)、新技術の事業化を成功させる要因の80%は優良テーマの選定にありそのテーマはクライアントの机の上にあることを認識する重要性、新製品の持つ欠陥は当該技術に有るのであり技術者は決して内在する問題に目を背けず困難に取り組む重要性(見敵必殺)、等々極めて示唆に富むお話でした。更に、東日本大震災を経て、パワーデバイスを底辺とする自律分散・ネットワーク型の街づくりにエネルギー問題の解決があると考えているが、漸くネットワークの基盤的底辺で使われるSiCパワーデバイスが出現しつつあるので、この破壊的イノベーション技術が我が国のスマートコミュニティ実現を加速していくであろうという指摘がありました。最後の点は、電力供給システムの改革をしなければなりませんが、遅まきとはいえ必須技術が実用化していくことは、我が国のエネルギー供給源の脆弱性の克服(火力や原子力に大きく頼らず足許の再生エネルギーを活用できる)をもたらすものと言えます。大組織で仕事をして得られた重兼氏のご経験と、本庄早稲田やヴェンチャー支援で得た経験が重なることを実感でき、貴重な機会を得たと思いました。
- 2015.5.12
第167回MINERVAビジネスプラン発表会に参加。
― 今回の最初の発表は、ジルコニア・セラミックスの歯冠修復に特化した歯科技工のQLデンタルメーカー?の石原氏から、保険診療が9割を占め過当競争に陥っている歯科医の治療に、アフォーダブルな非金属材料使用低額自費診療を可能とするソリューションを導入しようとする事業の説明がありました。徒弟制度と皆保険制度の世界に、ITを利用した加工技術と販促ツールで風穴を空けようとする斬新な試みで奮闘を期待したいところですが、願わくば1万円程度での自費診療を実現してほしいと思います。2番目は、電子お薬手帳を無料で調剤薬局と患者に提供しようとする?リーベンスの増田氏から、電通との協業による広告事業で手帳を無料化するとともに、処方薬情報を薬局・医療機関で横断的に共有可能にし、同時に掛かり付け調剤薬局化を展開しようとする事業の説明がありました。情報の共有化は重要と思いますが、広告・掛かり付け化の囲い込みと両立するかどうか疑問には思いました。3番目は我が国経済のグローバル化を象徴するように主に日本中古車の輸出入マッチングサイトサービスを提供する?Car From Japanのイナム イフテカル氏から、所得の上昇が著しい東アフリカ諸国の自動車輸入業者と我が国の自動車ディーラーを結ぶマッチングサイトと輸出入仲介事業の説明がありました。同氏はバングラデッシュ出身とのことで、我が国への留学から世界市場を対象として起業に至る経緯を見て、グローバル化を実感した思いでした。
- 2015.4.28
埼玉経済同友会例会講演会に参加。
― 本庄早稲田国際リサーチパークの縁で、埼玉経済同友会の講演に参加する機会がありました。講師は、カルビー?元会長の松尾 雅彦氏で、現在、本庄早稲田国際リサーチパークのオープンイノべーション研究会の食と農部会でも議論の対象としている“農業の再生”をテーマとする「スマート・テロワール-農村消滅論からの大転換」の著者です。工業国の成熟の先には、米、英のように農業が主力となった社会があるとの認識に立って、高齢化した零細農業の向こうに在るべきものとして、米作一辺倒ではなく、米作向け耕地の畑作転用、畜産転用を図り、自給自足に戻った落ち着いた農業と農村を目指すべきと言うのが著作の主旨です。一挙にこのような転換が図れるかどうか懐疑的ではありますが、エネルギーの需給のシステムを重ね合せてみると、ピッタリ呼応しあうところがあり、著作でも引用されているドイツの農村の姿は、まさに農業とエネルギーが重なり合ったものです。経営は危機との道連れであり何かと政府や公的機関に依存しようとする経営姿勢に対する疑問、自立し技術力ある中堅企業の目標であるドイツの中堅製造業(Mittelstand)、ジャガイモの契約栽培による農家との共存に代表する互酬(お互い様で双方ウィンウィンの関係)の道の探求、など、通常の大手経営者とは異なる異色の講演でした。
- 2015.4.22
オープンイノベーション協議会(Japan Open Innovation Council)第1回JOICセミナーに参加。
― 我が国の製造業が激変する外部環境に対応していくためには、オープン・イノヴェーション(以下OIと略記)的なアプローチを取らざるを得なくなってきていると考えていますが、そのような潮流のなかで新エネルギー・産業技術開発機構(NEDO)が事務局となって発足したオープンイノベーション協議会(JOIC)のセミナーでした。NEDO自体も多くのプロジェクトの委託開発等をしてきており、それらの成果を当該受託会社だけでなく我が国全体で活用していくためにはOIの考えを広く浸透させていく必要があり、このような協議会の事務局を務める必然性が有ったものと理解しています。当日は、国際的にグローバル企業の新規技術提供者の探索等を行っている?ナインシグマ・ジャパンの諏訪社長からの同社の掲げるOIの概念と事業の紹介のあと、「求める技術を探索するための有効な方法とは」 のタイトルでパネルディスカッションがありました。パネリストの大阪ガス?技術戦略部オープンイノベーション室長松本氏から、OIの老舗である同社の考え・取組み、当初の社内の抵抗等について説明がありました。同じく、オムロン?技術・知財本部応用開発センター長来海氏からは、上海の開発拠点設立から始まった外部開発能力の活用の流れが競争対応のために期せずして広がっていった経緯を説明していました。?KDDI研究所取締役戦略部門長野本氏からは、キャリアの差別化戦略と新サービスの取込み等の観点から行っているアーリーステージからのヴェンチャー企業の支援、大手ユーザー企業との連携、最終的なヴェンチャー企業買収等の紹介がありました。立場が少し異なる大阪大学産学連携本部長理事・副学長馬場氏からは、ダイキンのフッ素利用熱媒体の開発やコマツ大電力の省力化技術の開発、マイクロ波化学の開発拠点化など大学能力の活用ニーズで始まった協働研究所の共同研究講座の仕組みの説明がありました。物質材料研発ヴェンチャー企業である?オキサイド社長古川氏からは、大手企業が開発を停止した多様な単結晶物質の受託開発を進めながら大企業にソリューション提供を行い、世界的な材料供給の立場を確立してきた経緯を説明していました。会場参加者には、我が国製造業の垂直構造での社内開発体制の限界を認識しつつも社内体制優先の下でどう外部能力を活用していけば良いかの戸惑いがまだ根底に継続しているように思われました。最後に産総研副理事長金山氏から つくばに所在する国立研と筑波大で構成するつくばイノベーションアリーナ(TIA-nano)の紹介と積極的な利用の依頼がありました。
- 2015.4.14
第166回MINERVAビジネスプラン発表会に参加。
― 今回の最初の発表は、GPSに代表される衛星測位技術を利用したソリューションを提供するマゼランシステムズジャパン?の岸本氏から、1センチ以下(定点)の精度を必要とする測量用に使われていた技術を低価格で産業用に提供するL1Multi GNSS RTKモジュールと農機メーカー等による利用開始の説明がありました。海外の研究拠点を活用して精度の高い技術の開発を進めている点、応用範囲の広い技術を有している点で、先行資金投入の効果が表れるまでの苦労と、IoT技術と同社の技術との繋がりを想像しながら説明を聞いていました。二番目は大腸菌等を使った遺伝子組替えによらずタバコの葉内に遺伝子を注入して必要なタンパク質を合成しようとする?UniBioの佐藤女史から、スキンケア製品の原料となる植物由来上皮細胞増殖因子(EGF)の製品化を目指している現状と、今後の研究試薬や抗体医薬への利用の展望の説明がありました。タバコ農家との連携で、地域振興にも繋げようとする試みで、一定の量的確保の目途が付くのであるなら非常に面白いと感じました。最後にIoTのサービスデザインを行う?Sassorの石橋氏から、現状のHEMS事業のほか、分析データを使って職場環境や労働形態の変更等の提案を行うソリューション事業の説明がありました。今回の3社のプレゼンは、いずれも保有技術の波及効果が見えるものであり、活発なヴェンチャー企業の動きを感じ取れるものでした。
- 2015.3.10
第165回MINERVAビジネスプラン発表会に参加。
― 今回の発表は次の3社でした。最初は、?太陽住建から、公共施設、分譲マンション、企業等の屋根(屋上)に20年保証の防水工事を通常価格の半額で行って賃借し、当該屋根に第三者が出資した太陽光発電設備を設置して売電して資金を回収できるようにしようとする事業内容の説明がありました。二番目に?styleから、ダイレクトメール発送代行業務を行う同社がクロネコメール便の廃止により事業拡大が見込まれるところ、日本郵便との関係で郵送料の前払い金が増加するのでその資金繰りを解決する資金確保の話がありました。
最後に、日本環境投資?から、多様な有機物を土着菌の働きにより数時間で堆肥化を可能にする「急速土着菌増殖乾燥システムERS(Environmental Recycling System)」の説明と同社が計画する施設への投資資金の確保の説明がありました。最後のプレゼンは、かって当該菌の発見者であり当システムの発明者であると思われるシモセ氏が創設した会社のHPと技術が同じであり、また、当日のプレゼン資料はJapan ERS Technologyと言うところが作成した説明資料と同じで、これらの関係がよく分かりませんでした。
- 2015.2.27
第11回GPIC研究会に参加。
― 今回の最初の問題提起は、IHSグローバル?日本調査部ディレクターの南川氏から、IoTが大きな流れとなっていく中で、規制ないし非自由競争への誘導が市場を作っていくこと、その作られる市場の中では半導体として伝統的なメモリーICやマイクロコンポーネントICではなくセンサーやアクチュエターアナログICなどが主力となること、IoTの主力分野のエネルーギー管理ではモーターの省エネ化のためインバーター等のパワーデバイスの需要が大きくなること、等でした。残念ながら、パワーデバイスのメーカー側からどのように規制ないし誘導に参加するか、市場創造に何をすべきかの議論には発展せず、自動車の無人走行の方法論等に傾斜してしまいました。2番目には、ケイレックス・テクノロジー?代表の小篠氏から、「中小企業・ベンチャーの経営と新市場の展開について」とのタイトルで、創業以来10数年の事業柱の揺るぎ、創造性と安定性のバランス、経営の眼目等の経験談の披瀝がありました。ソフト開発受託事業、派遣事業及び自社製品事業のバランス、自社製品のコアとする特許への対応、ナショプロとの付き合い方、大手ユーザへの壁など小生のコンサル活動に対して非常に示唆に富んだ内容でした。
- 2015.2.10
第164回MINERVAビジネスプラン発表会に参加。
― 何時ものヴェンチャー企業等の発表会で、今回の最初は、レイン・バード?東 里美氏から、POP広告をiPadで誰でも簡単に作成できるアプリPOPKITとスマフォを通じて販促キャンペーンを行えるPOFUNの説明がありました。いわゆるクリエイターが参加して作成するデザイン・パーツを利用することでクリエイターの収入にもなりユーザの販促にも繋がるクラウド的仕組みのサービスです。2社目は、?ワコムアイティ今岡 克己氏から、手書きでモニター上に文字書いた場合の筆圧、筆癖、個人の書き順などを使って本人認証を行うLafcadioサイン認証の説明でした。最後に?丸和製作所柴田 豊氏から、フレキシブルプリント基板(FPC) で世界的に競争力を有する同社の最新の技術であるPEN(ポリエチレンナフタレート)樹脂をベースにした透明FPCの開発とLEDの実装例の説明がありました。極めて透明度が高く、剛直性が有りながら曲げ可能で、耐熱性もあり、面白い素材だと思います。同社は一度経営問題に遭遇したそうですが、MINERVAグル―プがテコ入れをして競争力を回復し、国際展開も行いながら国内に製造拠点も有するユニークな会社だと終了後聞きました。我が国の中堅製造業にとってのモデルになると考えます。
- 2015.2.7
「モジュール化」対「すり合わせ」−日本の産業構造のゆくえ・研究会に参加。
― 立命館APUの中田幸彦氏、経産研究所の安藤晴彦氏、東北大学の柴田友厚氏の3者が公益財団法人産業構造調査研究支援機構(冲永 佳史理事長)から助成を受けて進めてきた研究成果の発表の場で、久しぶりにすり合わせと言う用語の有効性について考える機会となりました。自動車を始めとする製造業からサービス業、農業に至るまで、ディジタル技術を抜きに何事も語れなくなり、かつディジタル技術とモジュール化が不即不離である以上、中田氏が自ら著作の中で指摘しているように、「モジュール化」対「すり合わせ」はマイナーな分析フレームワークとなっていると感じますが、かって東大の某氏が提唱した日本人は「すり合わせ」が得意という思い込み的議論は今でも人口に膾炙しているので、当日は、すり合わせ論大好き日本人を反映して満席でした。上記3者の議論を聞いて思ったことは、設計の考え方、製品作りの考え方であるModularityとIntegral(名詞で統合という意味が相応しい。)の用語の対比で議論すべきであって、組織や個人、あるいは組織外の第三者と第三者の間で起きる意見の遣り取り・調整の動態ないし手続きを、同時に「すり合わせ」の用語を使い、ModularityとIntegralの両製品の製造を通して議論しているところから、混乱が起き、分析フレームとしてはマイナーだと言うことになっているのではないかと言う疑問です。従って、モジュール化を進め短期間に変動する市場に対応しないといけないと主張する電子機器業界において、すり合わせが有効に作用しているのだという変な分析になってしまうのだと思います。すり合わせの用語を使うとすれば、例えば、金太郎飴的で多階層で正社員指向の垂直的組織と少階層で異質の人材の集まる流動性の高い水平的組織との比較において、マネジメントの違いなどを語るときに、得意とか有効ではなく、指標の一つとして使われるべきだと思います。とは言え、このような場を提供することに貢献された公益財団法人産業構造調査研究支援機構に敬意を表したいと思います。
- 2015.2.6
スユアe−パブリシング研究会オープンフォーラム第120回に参加。
― 同研究会を主宰する伊藤氏が年一回PAGE(日本印刷技術協会が開催する展示会)に合わせて開催する勉強会です。今回は?ブックアレーの原田晶文氏から、電子書籍のサイトでは無機的に電子書籍が表示され内容紹介も限定されている仕組みを面白い本に「出会える書店」とする「本屋横丁」の紹介がありました。次に?タグキャストの鳥居暁氏から、GPSが届かないモールにおいて場所を表示し顧客を誘導して個々の顧客にセールスを行うTAGCASTの紹介がありました。最後に、?テンダの菊地淳氏からマニュアル・eラーニング作成ソフトDojoとその事例についてプレゼンがありました。PAGEそのものが印刷技術の展示会から、情報メディア技術、ディジタルな画像の作成、情報の移転の展示会に大きく変わっていく中で、その役割にも転機が来ていると感じました。同時に、電子書籍も当たり前になって、立ち読み的出会いと楽しみをどう作り上げるかという新たな課題に遭遇している転換期のオープンフォーラムであることも感じました。
- 2015.2.5
第9回FRI経済研ワークショップ「2015年の中国経済−課題と展望」に参加。
― 富士通総研の柯隆主席研究員が主宰するワークショップで、今回は同研究所の内部成果を発表する場として、趙偉琳上席研究員から「中国経済の構造転換と都市化の進展と課題」、柯隆主席研究員から「2015年の中国経済の行方」のタイトルでプレゼンがありました。我が国の1950年代、60年代に生じた農業部門から工業部門への就業機会の移動と都市への人口移動と同じことが中国においても生じていて、これが過去20年ほどの中国の高度成長を支えてきた訳ですが、都市戸籍と農民戸籍の構造的差異を前提として都市での所得格差の拡大が放置され社会的不安が増大しているのではないか、戸籍制度の改革が進められ同時に都市で第三次産業のウェイトが趨勢的に高まる中で新たに都市戸籍を取得した元農民の所得が果たして上昇するのか、農民も農地に対する所有権取得の期待から改革には様子見であり政権が期待するほど改革は進まないのではないか、共産党党員と所得高上位層が重なる構造が定着している中で政権の進める政治・経済改革が実現しうるのか、等、非常に大きな問題提起がされたワークショップでした。悪天候にも関わらず、満席で参加者の関心の高さを示すものでした。
- 2015.1.23
NEDO新エネルギー技術革新事業ビジネスマッチング会に参加。
― NEDOの事業カタライザーとなったことがきっかけで本マッチング会に参加しました。主に、NEDOの新エネベンチャー技術革新事業のフェーズC合格ないし卒業者12社が参加し、自社技術や製品をプレゼンしていました。支援側・受け手側も会場一杯で、現在支援している企業との組み合わせを念頭に置きつつ個別のプレゼンを聞いていましたが、このマッチング会を梃にして、全体にうまくシーズ側とニーズ側が繋がればと思います。個々のプレゼンに係る技術や製品はそれなりに特色があり、現在支援中の企業の技術・製品と組み合わせ可能なものが幾つかありました。全般のプレゼンを通じて強く感じたことは、特に新エネルギーの一定量の導入の促進を考えると、これらの個々の技術や製品は孤立しており、これらを組み合わせ地域の面的な広がりでシステム的に展開していく後押しが必要だとの点です。中堅どころのエンジニアリング会社が中心となり、電力会社やその他のユーザとの繋ぎを付けて行く仕組みが不可欠で、導入までのNEDOの役割に大いに期待したいと思います。
- 2015.1.16
オートモーティブ ワールド2015専門技術セミナーに参加。
― Bosch社のDirk Hoheisel氏の「革新を生み出したオープンイノベーション事例 」と題する講演を聞きました。今後の自動車の新技術動向の3つのキーワードは、automated、connected, electric であると前置きをして、標準とオープンイノヴェーションを2輪として技術革新の先頭を如何に走り続けるかの説明をしていました。標準では、同社が主導したController Area Network (CAN) が国際標準化され有力メーカーで採用されて20数年経過した一方で、GeniviやAutosarなどは数年と、年々標準として確立する期間が短くなっていることが印象的でした。更にsafetyに関わる標準とパラレルにsecurityに関わる標準化も主導しているとのことですが、これに至っては完全にグローバルな協調体制が必要となってくるので、同社がオープンな活動を指向することは当然であると思えました。オープンイノヴェーションに関しては、同社の創業者が自分に無い知恵は他人に借りることを自明としていたことに言及しつつ、多くの参加者・関係者のアイデアを集約しながらソフトウェアの開発を進めたmySPIN、自動運転における地図情報・道路情報等を有する者との協業の成果であるeHorizonなどの例を紹介していました。部品メーカーでありながら、リーダーシップを発揮し、開発の主導を取りながらも、結果的に競争部品メーカーのみならずアッセンブラーも含め多くの同業者を味方にして、時間を節約し、市場を押さえていく同社の戦略の強かさに触れることができました。