- 2020.12.11
日本開発工学会第7回総合シンポジウム「DX2020/21 ディジタル社会変革の行方」に参加。
― 所属の工学会のシンポで、3回に分けて講師の講演を聞くこととなりました。今回は初回として富士通総研エグゼクティブコンサルタント柴崎辰彦氏から「ディジタル変革時代に実践すべきこと」のタイトルで講演が有りました。講師の説明にもありましたが通常5,6回分の講演の内容を1時間強で話をするとのことで非常に盛り沢山であり、フォローしきれませんでした。敢えて印象を書くと、インターネットが普及しIT時代に突入したと言われて20年近く経過しているにもかかわらず、我が国の大手企業や大組織の仕事の仕方が未だ変わっておらず、一段と技術が進んで使えるツールが各段に増加してきているので組織の動かし方、仕事の進め方、顧客との接し方等を抜本的に変えていける時代になっているとの結論では無かったかと思いました。ただ、気になる点としては、説明の大半が大企業で目的的・機能的・流動的に組織を作り解散していくことの必要性に触れているにもかかわらず在るべき人事制度については言及がなく、工場や研究所での議論ではなくホワイトカラー対象の議論になっていたこと、顧客ためにという大目的ではなくDXのための変革だという論調になっていたこと、最終の顧客・消費者はスマフォ端末の向こうに存在するものだという割り切りになっていたこと等が挙げられます。
- 2020.12.11
新川崎新産業創造センタービジネスマッチング「FA・物流/ロボットを使ったソリューション」に参加。
― 新川崎駅周辺に所在する川崎市のインキュベーションセンターに入居するロボットベンチャーのプレゼンとユーザとのマッチングの場でした。最初に(株)CoLabの川畑晋治氏から、生産工程や倉庫の自動化の設備・装置の導入のみならず費用投資効果を合わせて検証して顧客に示すコンサル業務の説明がありました。センサーと機械学習を応用した自社の自動ネジ締めや封入材注入のデモもあり、このようなハードとソフトを合わせたコンサルには強みが有るように思われましたが、HPにはハード部分の説明が無いことが残念です。次に、(株)LexxPluss阿蘓将也氏から、自動搬送ソフトウェアシステムLexxAutoと小型の搬送ロボットLexxHardをオープン化することによりユーザに合わせてカスタマイズして導入を進めるとともに、合わせてユーザの工場や倉庫向けの自動化コンサルも行う事業の説明が有りました。最後に、GBS(株)の岩崎俊輔氏から同社のパワーアシストの装着ロボットの説明が有りました。同社は2回目の登場ですが、以前に感じたバッテリーに起因すると思われる重量が気になります。軽量化と小型化を図って小柄なアジア人や女性でも利用できるようにすべきであり、HPもドイツ本社の「翻訳」ではなく日本独自の説明をすべきと思います。更には、利用や導入へのソフトな支援・コンサルも行ってユーザフレンドリーにしていくべきだと感じました。
- 2020.12.8
第223回MINERVAビジネスプラン発表会に参加。
― 1社目は(株)マインドシフトの柏木宗利氏ほかから、自治体等の問合せ対応として学習しながら最適回答を示していくように設計されたFAQサービス、PDFを含めて類似文書を検索して当該求める回答部分を表示するソフト等の説明が有りました。これの導入により電話による問合せが減少した等の効果があるとのことでした。公的機関向けには大手開発会社が独占していると思っていましたが、小回りが利かせ、職員への簡単な研修を行うことでメンテも簡単になる中小企業の製品が普及することは良いことです。2社目は、(株)ファーレックスの大松 洌氏ほかから人工呼吸器及び人工鼻に係る特許を用いた新タイプの人工呼吸器を開発するとの説明がありました。残念ながら、受託開発先、資金提供先を探す初期の段階であり、また、海外大手メーカー製品との違いが不明であるため、理解が難しく終わりました。3社目は(株)メディオテックの松本秀守氏から、VPP(Virtual Power Plant)社会実現のため集合住宅や法人ビルに第三者所有(同社)の太陽光パネルを設置し、当該発電力を提供するとともに、需要供給予測を行って変動電力価格によりバランスを図る等の事業を進めている説明が有りました。説明でも多少触れていましたが余剰太陽電気を蓄えておく蓄電池がコアになりますが、同社の全体のシステムにおいてはその位置付けが不明であり、また、いったん契約を結ぶと長期間固定されるようであり、動的なVPPのシステムと静的なビジネスモデルとの齟齬が気になりました。
- 2020.12.4
台湾Biotech - MedTechスタートアップオンラインマッチングサロンに参加。
― 旧知のTSI社の往西社長等が実行に当たっているバイオ・医療系の台湾スタートアップと日本企業とのマッチングを行う場でした。全体の参加者は少なかったですが、個別の面談には日本企業が予定数手を挙げたとのことで喜んでいます。台湾側の最初の企業は、LuminX Biotech社で、台湾中央技術研究院より技術移転を受けて設立した企業で、蛍光ナノダイヤモンドを使って、前臨床試験段階で投与薬物が「どのように」「どれぐらい」体内を移動したか等、細胞位置の特定、定量化を可能にするものとのことです。2社目はVIRTUALMAN社で、AIツールを活用して化合物のスクリーニングだけでなく、化合物のデザイン、動物試験による安全性等の結果を予測することができるいうものです。既存のデータを学習させる等が必要だと思いますが、その点の説明は多くは無いようです。3社目はHUGES Biotechnology社で、国立台湾大学の生物化学出身者らが設立した企業とのことで、植物由来の成分の水溶性・生体吸収性を高める特許技術を使って機能性食品やサプリメント向け素材を提供しているとのことです。いずれもHPの情報だけでは、技術の概要も不明でどの程度信頼性が高いのか分からず、また、検索で見つけられるためのキーワードも少ないと思われます。これは我が国のバイオ・医療系のスタートアップにおいても同じですので、何とも言い難いですが、マッチングにより既存企業をパートナーとして行くにはある程度の開示とキーワードが必要であろうと感じました。
- 2020.12.1
インプレスオンラインセミナー「コロナ禍の新製品開発〜量産のリアル」に参加。
― リコー発で民生用全天球カメラを産み出したベンチャー企業であるベクノス社が、量産試作に移る過程でコロナ禍に遭遇し、上市までを如何に乗り超えていったかを、同社の生方秀直氏から説明がありました。まずリコーのオープンイノベーション的な仕組みとして、内部技術の実用化に際して外部のスポンサーが付けば社外にスピンオフさせて加速するという点に他社にはない面白い切り口だと感じました。そのようにして5名ほどで会社を立ち上げ、台湾の会社と試作開発し、中国企業に量産試作を依頼するところでコロナ禍により打合せ等が総てオンラインとなったとのことでした。危機に遭遇して、ミッション・目標がぶれることなく、利用可能なコミュニケーションソフトを活用して時間を無駄にせず間断なく開発を進めていったことにより上市に繋げられたことは敬服すべきです。経営としては、恐らく、コロナ禍に関係なく、小人数であるために幹部の決断で短時間に進めて行けたので、大組織で果たして末端の小グループに資金も含めて裁量を与え開発等を進めて行けたか疑問が残ります。また、本件はたまたま資金調達を終えていた段階のようでその点が幸運であったとも思われます。最後に、製造業の量産という謳い文句でしたが、結局、台湾、中国と言う外部のリソースを使っており、国内でソフト・ハードの開発が出来ないほど我が国の空洞化が進んでしまっているのか、その点の検証が欲しかったと思います。
- 2020.11.27
NRW.Global Business Japan Fireplace WebTalk: Leading E-Mobility in Germany/NRW and Japanに参加。
― 電気自動車(EV) の普及に本腰を入れているように思えるドイツの取組みの紹介でした。NRW州等政府の取組みの説明の後、E.ON社Frank Meyer氏から同社が自然エネルギーを活用してEV向けの電気提供のサービスを欧州全体で展開している紹介がありました。同社は2000年前後のドイツの電力自由化によってかつてのプロイセン電力とバイエルン電力が合併しガス事業にも参入している巨大エネルギー会社ですが、その一部門であるE.ONソリューション社 としてEV向けサービスを行っているとのことでした。次にフエニックス・コンタクト E-モビリティ社Michael Heinemann氏からEV向け給電装置、システム、部材等の開発の状況と急速給電を可能にするDCハイブリッド装置の説明がありました。次にWuppertal大学のKevin Kotthaus氏から、EVが大量に導入された場合の需給バランスの確保、送配電の最適配置、最適給電システムについての説明がありました。最後にアイトノミ・テレリテイル社のScholl夫妻から、無人の電動配送・運搬車の説明がありました。確かに大量のEVが導入され、至る所に給電拠点ができると需給バランスが大きく変わりますし、家庭用では一晩掛けてユックリ給電すれば良い一方で業務用では昼間に短時間に大容量で充電させる必要が出て来ますから、送配電の最適敷設だけでなく、料金の設計、変動の大きい自然エネルギーの補完電源等多方面での制度設計が必要になることが理解できました。バッテリーとEVとの標準化が進めば充電したバッテリー自体の配送と回収を行って、需給の最適化も可能となります。我が国ではここまでの議論は水面上には出て来ていないように思いますが、単純にEV化推進だけでは済まないことが良く分かりました。
- 2020.11.17
RIETIセミナー「地域密着型介護のプラットフォームとしての位置付け―この先の在り方を考える」に参加。
― 最近福島県の介護事業を地域作り・地域再生に活かせないかというグループに、偶然に知り合うこととなり、この分野への関心があるため、本セミナーに参加しました。講師は、(株)あおいけあ代表の加藤忠相氏で、施設の管理・運営側の都合に合わせた介護に疑問を抱き17年前に立ち上げたとのことで、基本は開放を原則とし、地域住民との交流を前提に建物を配置し、介護職員や若手ボランティアに家賃を安くして提供するアパートを設ける等の説明が有りました。放課後の小学生との行き来や、自分でやれる作業を継続することなどで、認知症の老人の認知度が軽減する実例を見ました。介護費用が今後増加して行くと予測されている中で、その軽減にも繋がると思われます。藤沢のような周辺住民が多い地帯での活動で、これがそのまま福島県に応用できるか不明ですが、非常に示唆に富んだ活動をされていることに敬服しました。
- 2020.11.12
つくば発!ベンチャー企業ミートアップ―創薬・バイオベンチャー特集―に参加。
― (株)つくば研究支援センター(TCI)は、茨城県、日本政策投資銀行及び民間企業等の出資で設立された第3セクターで、何度か足を運んだことが有ります。今回はTCIが支援している創薬系のベンチャーのプレゼンにオンラインで参加しました。最初は、(株)アークメディスンの田中圭悟氏から、未活用化学物質の構造を整理・統合して医薬品応用に適した物質を導出していく新規創薬合成技術HiSAPを活用して、特定の疾病治療の候補物質を短期間に見つけ出すとの説明が有りました。医薬メーカーへのライセンスと共同開発が事業モデルとのことです。次にセルメディシン(株)の大野忠夫氏から、脳しゅよう、肝臓がん等の難治性がんを、患者から摘出したがん組織と免疫をつきやすくする免疫刺激剤(アジュバンド)から作製した自家がんワクチンで治療する治療法の説明がありました。3社目は、ときわバイオ(株)松崎正晴氏から、細胞質で長期間安定な遺伝子発現を実現する世界初のRNAベクターによる遺伝子由来の疾病の治療に関する説明が有りました。最後に、アクシオンリサーチ(株)の佐藤友美氏から、個人の健康度と将来の疾患リスクを可視化して個人ごとに予病対策をサービスとして提供しようとする事業の説明がありました。いずれも重要でチャレンジングな課題に取り組んでいると思います。大学・研究機関での研究段階にAMED(国立研究開発法人日本医療研究開発機構)の助成を受けたとの報告が複数ありましたが、次の段階として実用化・臨床に移った際には民間資金を調達せざるを得ない我が国の構造がやはり浮かび上がったと思いました。この段階で公的資金と民間資金とをマッチングして投入する仕組みが何故創れないのか不思議です。
- 2020.11.10
第222回MINERVAビジネスプラン発表会に参加。
― 今回はソフトウェア関連の発表となりました。最初は(株)D4エンタープライズの鈴木直人氏から、1980年代以降のゲームソフトを蓄積し、現在の配信技術に合わせてコンテンツを復刻し、中高年のみならず若い世代にも提供している事業の説明が有りました。大手ゲームソフトメーカーにとっても言わば償却の終わった資産を有効活用できることとなり、面白い事業だと思いました。2社目は(株)フロンテスの舟崎信義氏から、コンピュータシステムのテストに特化し、コンサル、テスト受託から自社開発のツール販売に至る事業の説明が有りました。今後はツール売り切りではなくクラウドを使った継続的なコンサル・受託へ、更には海外市場への展開を進めるとのことでした。ソフト・システムのテストという重要であっても裏方的な事業の発展に期待したいと思います。最後に(株)Plaly稲尾拓也氏から、Facebook等のソーシャルネットワークから脱して、同期を強要されやすい現在のアプリではなく誹謗中傷を受けない24時間だけ10人とティームが作れるPlalyの説明がありました。Facebook等の問題点は見聞きしていましたが、実際に若い世代が正面から問題点を指摘していたのには驚きました。ただ広告も事業収入にする事業モデルなので、根本的な解決になるのか疑問は残りました。
- 2020.11.4
第10回自動車技術に関するCAEフォーラム2020オンラインに参加。
― 日大の生産工学部自動車工学リサーチ・センター主催で、かつて習志野での開催の時に参加して以来です。午前中の講演と最終のパネルディスカッションだけ参加しました。解析・シミュレーションの海外発のソフトウェアが益々進歩してきて、誰か国内では創っているのだろうかと言ういつもの疑問が湧いていましたが、午前中インテグラル・テクノロジー社の西浦氏から、シミュレーションに必要なデータ作成を自動操作して形状を学習していく自社ソフトの話を聞き少し安心しました。従業員15名のソフト会社ですが若い技術者が中心に海外展開もしているとのことでした。最後のパネルディスカッションでは、本フォーラムの責任者を今回で退任する日大の景山元教授から、長年、業界、大学を見てきた経験から、シミュレーションの信頼性確保のための検証を如何に行うべきか、ソフトを使う若い技術者は現場を知らないためにシミュレーションの結果を鵜呑みにしているのではないか、そのために産学官の連携はどうあるべきか、という深刻な問題提起が有りました。パネラーの本田技研の高山氏や日野の石灰氏から、若手や外国人従業員は現場・実験を知らないので同様の問題を抱えることとなっているとの回答があり、大学や工業団体での共通の学習の場が作れないかとの提案がされました。これらを受けて東大の須田氏からは、複数の大学連携の場を創ろうとしているとの紹介が有りましたが、東大が中心に座って大学を網羅する構想であり、産業界との接点は極めて弱いと思いました。変なものを作るよりも、JARI等を真ん中に据えて、大学も産業界も参加する中立的な場で、従業員が一定期間派遣されて学習訓練することが重要だと思います。先週のドイツNRWの5Gの共同実験場の構想でも感じ、またドイツの職業訓練の仕組みを思い浮かべても、ドイツの業界や地域、大学を横断する訓練実験の仕組みと発想が我が国に出て来ないことを改めて残念に思います。
- 2020.10.29
NRW Japan K.K. Fireplace WebTalk: 5G and the Digitalisation of Production in Germany NRW and Japan-Opportunities of the 5G-Industry Campus Europe in Aachenに参加。
― ドイツが提唱してきたIndusrie4.0を、5G時代が到来してきた中で、具体的にどのように製造現場で実現していくのかという問題意識でのセミナーであったと思います。最初にフラウンホーファーのNiels Konig 氏から、同研究所が進めている5G-Industry Campus Europeの説明が有りました。結構広い工場を使って、5G のアンテナが張り巡らされている結構広い工場を使って、クラウドにある情報センターにあるデータが工場内の工作機械に送られ加工情報がフィードバックされて、切削加工等が同時進行で制御される様子を説明していました。我が国で言うローカル5Gの製造現場での活用事例に相当しますが、このモデル工場はオープンであり、共同の実験場であり、恐らく実務研修の場でもあると想像します。我が国ではこのような広がりを持ってローカル5Gを語ることは難しいと思いました。ドイツのIndusrie4.0については、大企業主導で中小企業はその支配を受ける、標準制定の主導を取るためのデモに過ぎない等色んな批判も聞こえてきますが、ドイツの産業界、行政はIndusrie4.0を本気で進めていると思いました。その後、三菱電機の安井氏から、工作機械の製造企業であり提供者の立場から、同社の進める5G利用の自動化の事例が説明されましたが、ドイツに比べて、我が国ではモデル工場はオープンなモデル工場が存在せず、産業界の共同の実験場や大中小企業の従業員の共同の実務研修の場が無いことの大きな問題点を感じました。最後に、京都市所在のベンチャー企業である(株)ハカルス(HACARUS)のMarcel Takagi氏から、同社のAI活用の少量のデータから特徴量を抽出する解釈性の高いスパースモデリングの説明があり、同社のドイツ特にNRW州への進出の意向が表明されました。優秀な技術者が多く集まり関西の企業も出資している面白い会社だと思います。ドイツでの他流試合の成果が我が国にフィードバックされることを期待します。
- 2020.10.29
NRW Japan K.K. Fireplace WebTalk: 5G and the Digitalisation of Production in Germany/NRW and Japan-Opportunities of the 5G-Industry Campus Europe in Aachenに参加。
― ドイツが提唱してきたIndusrie4.0を、5G時代が到来してきた中で、具体的にどのように製造現場で実現していくのかという問題意識でのセミナーであったと思います。最初にフラウンホーファーのNiels Konig 氏から、同研究所が進めている5G-Industry Campus Europeの説明が有りました。結構広い工場を使って、5G のアンテナが張り巡らされている結構広い工場を使って、クラウドにある情報センターにあるデータが工場内の工作機械に送られ加工情報がフィードバックされて、切削加工等が同時進行で制御される様子を説明していました。我が国で言うローカル5Gの製造現場での活用事例に相当しますが、このモデル工場はオープンであり、共同の実験場であり、恐らく実務研修の場でもあると想像します。我が国ではこのような広がりを持ってローカル5Gを語ることは難しいと思いました。ドイツのIndusrie4.0については、大企業主導で中小企業はその支配を受ける、標準制定の主導を取るためのデモに過ぎない等色んな批判も聞こえてきますが、ドイツの産業界、行政はIndusrie4.0を本気で進めていると思いました。その後、三菱電機の安井氏から、工作機械の製造企業であり提供者の立場から、同社の進める5G利用の自動化の事例が説明されましたが、ドイツに比べて、我が国ではモデル工場はオープンなモデル工場が存在せず、産業界の共同の実験場や大中小企業の従業員の共同の実務研修の場が無いことの大きな問題点を感じました。最後に、京都市所在のベンチャー企業である(株)ハカルス(HACARUS)のMarcel Takagi氏から、同社のAI活用の少量のデータから特徴量を抽出する解釈性の高いスパースモデリングの説明があり、同社のドイツ特にNRW州への進出の意向が表明されました。優秀な技術者が多く集まり関西の企業も出資している面白い会社だと思います。ドイツでの他流試合の成果が我が国にフィードバックされることを期待します。
- 2020.10.29
NANOBICナノ茶論第3回セミナー「有機半導体材料の現状と実用的な高速成膜技術の達成」に参加。
― 今回は東工大創成科学研究院半那純一氏から、Printed Electronics用半導体の有力候補とされる有機半導体材料が幾つも開発されていながら、候補有機材料の溶液への溶け易さと半導体性能維持とは両立しがたく成膜化が困難であることが実用化への障害となっていることの説明が、前半に有りました。分子が大きく修飾機能が多い方が導電性は高い反面、分子量の大きさと溶け易さはアンビバレントであり、成膜は困難となることだと思いました。この問題を解決するために、有機半導体材料に発現する液晶性を活用した多結晶膜の成膜方法を開発したと言うことでした。非常に理論的な説明が多く、残念ながら理解は殆どできませんでしたが、まだまだ実用化までは時間を要するようで、多結晶膜とすることによる耐久性・堅牢性がどうなるのか、有機半導体でなければならない本質的な用途は何か、などを考えさせられました。
- 2020.10.21
関東経産局「地域企業×スタートアップ連携セミナー」第2回に参加。
― 今回は、創業110年を超える京都の吉村建設工業株式会社と、建設用3Dプリンティングロボットを開発する2019年創業のスタートアップ株式会社Polyuse(ポリウス)との共同技術開発実証と今後の連携の話がありました。比較的保守的な建設業界にあって、吉村建設は同族企業ですがトップの世代交代で経営者が若くなり、将来へ向けての技術力や人材強化を模索していたところへ、古い業界体質を打破するべく新しい技術の開発とその普及を狙って起業したPolyuseが人を介して出会ったというのが発端の様です。2020年8月より「モルタルを用いた建設用小型3Dプリンティングロボットの射出造形実験」の共同実証を行いましたが、経年劣化の確認や新技術の改良・修得など長期間に渡って連携が必要となるため今後も共同での活動を行っていこうとしているとのことでした。大学関係者も参加しているようで、継続して面白い成果を出していって欲しいと思います。引き続きの面白い事例の発掘を通じて、色んな産業界へ連携の価値が認識されることを期待します。
- 2020.10.13
第221回MINERVAビジネスプラン発表会に参加。
― 最初はフラットーク(株)樫平 扶氏から、顔認証と通信機能が付いた赤外線温度計の説明がありました。同社は業務用の特定仕様の電子機器の受託開発を主にしてきた会社のようですが、コロナ対応として開発を行った赤外線温度計の説明が中心でした。多人数の対応も可能とのことで入退管理を行うには便利なようでした。2社目は、コンプラス(株)佐藤修一氏から、買い物困難者や情報弱者に対応したネット型スーパー「訪問型買い物代行サービス」のプラットホームサービスの説明がありました。介護事業者等の地域パートナーと地域スーパーが提携し、地域パートナーが登録買い物代行者に弱者を訪問して買い物代行することを依頼するという仕組みのようでした。今後の超高齢化社会を先取りした仕組みですが、特に介護事業者が介護サービス以外の付加価値事業を行うことで、更に地域の中核となっていく可能性があると思われます。福島県・山梨県のスーパーと具体的な事業を始める準備をしているとのことでした。3社目は、(株)MiKuTAY新田 實氏から、排気流量を増やしても圧力損失が増加しない構造を有した高熱伝道効率と小型軽量化を実現した熱交換器の説明がありました。HPで見ても原理が良く分かりませんが、小さな交換器を組み合わせて容量を大きくしたり多様なユーザーに対応できるようにしたとのことで、モジュール化を基本に置いた製品のようです。大手商社が資本を入れ幾つかの事業者と具体的な商談が進んでいるとのことでした。
- 2020.10.6
TEP事業計画プレゼン会(オンライン)に参加。
― 先月に続いての参加でした。今回は、(株)MoBiol藻類研究所渡邉 信氏から筑波大学で生成された特別な藻を使い、パーム油製造時の排水に含まれる有機栄養素を基に藻の活動により、高機能DHAや養殖に必要なアミノ酸を製造するとともに、これら生成物を飼料、サプリ等として販売する事業の説明がありました。パームオイル産業はインドネシア東南アジアでは有力な事業として増加しつつも森林破壊や河川汚染、残渣物の廃棄等多々問題を起こしていることは良く知られていますが、HPで見るとシンガポールに全体を統括する持ち株会社を置き、インドネシアにも現地法人を設ける等、事業としては十分な体制が取られており、廃棄物から有価物を産み出す非常に有意義なものと思われました。疑問に残ったのは何故この段階で製造工場建設に係る巨額の資金調達が必要であるのかの点で、これは説明が最初無く、後に、当初の主体であった丸紅が巨額損失を計上したために資金提供ができなくなったことが分かりました。単純に丸紅が抜けた代わりに他の商社に頼む等のことはできないので、インドネシアを始め東南アジアの富裕層の資本参加を得て、製造と生成物の東南アジア販売を行う事業計画に修正するしかないのではないかと感じました。現地の資本が参加してくれれば、我が国の他の商社や大手の参加も可能になるのではないかと思います。
- 2020.9.26
SVIF9月定例講演会『「コーポレートベンチャリング」を考える』に参加。
― Silicon Valley Innovation Forumには実に10数年ぶりの参加ではないかと思います。皮肉にもコロナ禍で、インターネットを使い太平洋を跨いだ同時会議が簡単にできるようになりました。我が国で久しく指摘されている大企業のオープンイノーベーションの問題を、SVに拠点を置いて活動している日系企業・日本人活動家から話を聞く趣旨でした。最初にPanasonic Ventures LLC西川孝司氏から、試行錯誤の結果、本社事業部門と新技術や新規事業を繋げる投資では無くキャッシュリターンを唯一のKPIとするVC投資を行っていることの説明がありました。更に我が国大企業の通弊である3年程度の人事異動の弊害をクリアするためにVC経験のある有力なスタッフをSVで雇用し継続性を持たせ、有効な情報収集を含めて活動しているとのことでした。97年からSF・SVに勤務していた時から同社のCVCは有りましたが長年の経験を積んで活動の改善を図ってきたようです。次にAsahi Kasei America, CVC、GM森下 隆氏から長期間SVに滞在することで現地にネットワークを構築し事業買収を行ってきたとの説明がありました。日本企業的CVCですが、投資事業分野を明確にしSVだけでなく世界を対象として、かつ決定権をSVに有することで成果を上げてきているとのことです。最後にKomatsu America MG植野正俊氏から05年以来SVで生活し現地ネットワークを構築したうえでコマツのスタートアップ連携を担当している説明がありました。同氏は、同時にSVの人間として現地の様々な横の繋がりの場を運営しており、同氏をコマツが選んだことは非常に有意義だと思います。以上から我が国の大企業のオープンイノーベーションの解は出ている訳ですが、日本での組織・人事の原理では不可能だと思われました。3者が共通して指摘した点として、真のネットワークは遺憾ながらオンラインでの会議では構築できないこと、製造業の既存事業のソリューション化(BtC)にはフィンテックを使うことが必須であるとの2点でした。後者については新しい視点で考えるべき宿題でした。
- 2020.9.23
電通大第22回ICTワークショップに参加。
― 久しぶりに電通大の活動に触れることができました。最初にUECアライアンスセンター運営支援室中嶋信生氏から「5G、ローカル5G無線方式の動向」とのタイトルで5G技術についての基本的な解説がありました。速度が飛躍的に速くなり遅延性も極めて小さくなるということは聞いていましたが、波長が非常に短くなるため長距離には飛ばせずアンテナも多くかつ小さくなるとのことで、自動運転のような広域・屋外での利用を実現させるためには非常に複雑な仕組みを創り上げていく必要があると想像します。メディア等ではバラ色に扱い過ぎている気がしました。次に(株)KDDI総研山崎浩輔氏から「5Gの次を見据えたKDDI総合研究所の取り組みご紹介」とのタイトルで、限定された周波数を異事業者が共用できるシステムの開発、分散配置される極めて多数のアンテナをユーザの保有するアンテナも含めて複数のユーザ・事業者が共用できるシステムの開発の話がありました。後者については、インターネット等の普及時にあったPCの空き容量を他者に利用させる仕組みを思い出させました。最後に情報理工学研究科機械知能システム学専攻小池卓二氏から「耳鼻咽喉科領域の医工連携研究」のタイトルで、内耳の耳小骨の振動を計測して難聴手術をし易くする、頭蓋骨の振動を使う埋め込み式の補聴器を開発するという話がありました。更に振動を利用した害虫駆除や受粉促進の話があり、電通大としては非常にユニークな話でした。本ワークショップは、電通大のインキュベーションセンターであるアライアンスセンターの入居企業の技術紹介と産業界との連携を進める目的で開催されるものですが、今回は最初の中嶋氏の説明で時間を取られてしまい、肝心の入居企業である山崎氏の話を端折ってしまった点が残念でした。次回の改善に期待します。
- 2020.9.17
岡山大学JSTオンライン新技術説明会に参加。
― 午後の4件を聞きました。最初に、異分野融合先端研究コア仁科勇太氏から「グラフェン類の製造と用途開拓〜研究指針とノウハウ〜」の話を聞きました。2次元の炭素原子で構成されるグラフェンは、導電率も高く強度も高いために金属代替の可能性を秘めた材料ですが、安定的に製造供給する技術が無いことが欠点です。黒鉛シートを陽極としHBF4(テトラフルオロホウ酸)を溶かした水に浸けて直流電気を流すことでグラファイトシールに剥離させる電気化学参加の方法を発明したとのことです。更に、黒鉛粉末を溶かしたHBF4溶液に直流電気を流すことでグラファイトシールの形成を図る目途を付けつつあるというものでした。非常に面白い試みと思いますが、実用化にはまだ時間を要しそうで、是非、企業とも共同して先に進んで貰いたいと思います。2つ目は保健学研究科検査技術科学廣畑 聡氏から「内皮由来急性虚血反応性分子(AHR)による診断・治療の臨床応用を目指した研究」の話を聞きました。心筋梗塞や脳梗塞の発症3時間内にAHRの分泌が高くなるのでこれを使った検査方法を確立しようとするものでした。3つ目は、歯薬学総合研究科生体材料学分野松本卓也氏から「生体組織接着性チタンシート」の話を聞きました。人工関節やインプラントに使われるチタンの人体組織との親和性を使ってチタンシートを諸手術の際の支援材や体内センサーの基板に使おうとするものでした。4つ目は、環境生命科学研究科資源循環学専攻高口 豊氏から「カーボンナノチューブ光触媒を利用した人工光合成技術」の話を聞きました。酸化チタンは有力な光触媒ですが紫外線にしか反応せず、カーボンナノチューブは紫外線から可視光、製外線まで広く反応するものの表面に異分子を付着させる修飾が必要であったとのことです。この異分子に酸化チタンを選び付着させる(詳しい説明は省略されていた)ことで実用化に近づけたとのことでした。太陽電池による電気分解で発生させた水素をアンモニアとして輸送しますが、アンモニアから水素に戻す際にオンサイトで利用できる点を強調していました。有機系の光触媒をどのように固定化して利用するか個人的に長く関心がありましたが、酸化チタンに固定するというのはコペルニクス的で、塗装剤として利用の範囲は広がりそうです。
- 2020.9.16
TECHNO‐FRONTIERバーチャル展示会2020に参加。
― 一般社団法人日本能率協会の主催で、最初に、サイプレス社布施武司氏の「カーエレクトロニクスの進化と 未来を支える半導体技術〜2028年までの電子部品技術ロードマップの概要と紹介〜」の話を聞きました。GPIC研究会で多少勉強してきたので、新しい動きに関心を持って聞きました。独のインフォニオン・テクノロジー社がサイプレス社を買収したことで、彼らが提供するソフトは非常に範囲が増え、自動車の自動運転に近づいたとのことでしたが、ソリューション中心の説明で、自動車の高温・高湿度、安全要求等の厳しい環境に耐えかつ集積度の高い半導体の開発がどこまで進んでいるのか、関心のあるところは聞けませんでした。独企業による米社の買収ですが、米中の通商問題の中で、米国オリジンの部分を含む製品・技術を搭載した自動車の対中輸出規制が影響してくるだろうとも思いながら聞いていました。2つ目に、セールスワン(株)山本圭一氏の「ICタグを活用した持出・返却管理や現場の保全・安全対策の事例を一挙公開!afterコロナ時代を勝ち抜く現場の重要資産の見える化・使える化」を聞きました。中小・中堅企業の製造現場での工具や部材等の管理を効率的に進めることは、生産性の向上にとって必須ですし、人材教育等時間とエネルギーをコアに集中していく上でも重要と考えます。従業員にもICタグ付きの身分証明書を携帯させ、誰が何時持ち出し、その後の所在場所、返却完了したか等をハンディリーダーで現場で即時入力し二度手間を無くしてしまうことで、簡便で常時把握のできる仕組みができるだろうと思いました。意外と大手にもユーザがあるようですが、仕組みが段々複雑になって行っているようで大手では結局、紙管理に近いものになりそうな予感がしました。
- 2020.9.12
関東経産局「地域企業×スタートアップ連携セミナー」に参加。
― 地域の中堅製造企業とスタートアップとの連携を進めることにより、地域での新しい事業を産み出そうとする試みで、従来大手企業とスタートアップとのオープンイノベーションが謳われていますが、中堅企業とのオープンイノベーションを進めようとするもののようです。日本開発工学会での技術開発ベンチャー叢出と成長のためのエコシステム研究会でも触れましたように、中堅企業は非公開オーナー企業であり、同じオーナー企業としてスタートアップとの相性は良いはずであり、中堅企業の事業承継を考慮しての新規の事業の柱を立てていく際にもスタートアップとの連携は良い機会を提供するものだと考えていました。ようやく中堅企業、特に地方の中堅企業を前面に出した動きが出てきたことで、地方の活性化が進むことを期待します。今回はキックオフのセミナーで、岡山県のKOBASHI HOLINGS(株)の小橋社長がキースピーカーとなり、同氏の事業承継をキッカケとした同社の事業の再活性化とユーグレナとの連携の動きを例として、中堅企業とスタートアップとのオープンイノベーションの重要性を強調していました。同社は現在、スタートアップの試作受託や貸工場的なサービスも行っている模様で、今後に大いに期待したいと思います。なお、このオープンイノベーション・マッチングの事務局は、研究者の人材育成や共同研究、ベンチャー創業支援等を行う(株)リバネスで、事務局としてもユニークな企業ですので、今後の展開を楽しみにしています。
- 2020.9.10
Ansys INNOVATION CONFERENCEに参加。
― Ansysは1970 年に設立され、有限要素法解析、数値流体力学、電子工学および電磁気学、最適化設計等のスタッフを有する米国ペンシルベニア州カノンズバーグに本拠を置きNASDAQ上場のエンジニアリングシミュレーションの会社とのことです。我が国のユーザー企業の担当者の利用事例を紹介するセミナーの2日目の2事例について話を聞きました。最初は、日揮グローバル(株)の川島雄太氏から、プラント設計における排煙拡散解析によるスタック(排気口)の最適高度の事前シミュレーション、異温度物質混合時の温度解析によるセンサー最適設置場所の事前シミュレーション、配管の漏洩トラブルの原因分析のシミュレーション等の利用の説明がありました。次にENEOS(株)白井宏明氏による同社プラントの接触分解用サイクロンの効率向上のための改造、ノズル腐食防止のための構造変更、新規事業の微生物培養装置の最適条件設定等のシミュレーションに、特に流体力学解析(CFD: computational fluid dynamics解析)を活用した事例の説明がありました。シミュレーションソフトは、個々の技術者の暗黙知を形式知化し社内のみならず事業として外部と共有していくツールだと思いますが、我が国では暗黙知がそのまま暗黙知に留まり形式知化していくことができなかったことに競争力の停滞の原因があると考えながら話を聞いていました。我が国企業が得意とされる摺合わせは暗黙知に過ぎず、これを文書・ソフトウェア等に置き換えて組織で共有することが必須でその手順についての戦略的な考えがないまま推移してしまったと思います。大学の工学部の学生の教育に使うとともに、更に我が国発のシミュレーションソフトが生まれないといけませんが、ゲームではなく諸産業の基盤を支えるシステムのプログラムに眼が向くようプログラム教育を高校でも進めて行くべきだと考えます。
- 2020.9.8
第220回MINERVAビジネスプラン発表会に参加。
― 本会は人数を絞ってですが実際に集まって発表を行っています。オンラインでの発表が普通になってしまいましたが、やはり発表者の人柄・熱意等は現実に眼で確かめるべきで、支援の難しさを改めて感じさせられました。最初は、(株)C-t-iの田口 亮氏から、普及版のRFIDと人感センサーを使って、ホテル等で人の移動を確認するエリアセキュリティのサービス、外国人を対象とする非接触の自動言語変換、情報案内等のサービスの説明がありました。比較的簡単な仕組みで大手企業が対象としそうにないニッチのサービス提供に割り切った面白い技術だと思いました。次に桐生電子開発合同会社の木暮一也氏から、近赤外光を使用した非破壊で植物の生育状態を検出する“光アグリセンサー”とその応用として完全非侵襲で人間の血糖値の変化を示す“体内糖バランス計”の説明がありました。農業分野の自動化や生育状況を把握するセンサー活用の技術は他にもあるので、まさに地域の農協や農業者グループとの連携がカギになると思います。隣県栃木の苺のような群馬県の看板作物があればその生産者とへのアプローチを重点に行うことで浸透ができないかと考えました。最後に、ジーニアルライト(株)の下北 良氏から、一般的な室内環境で任意の300pWという微弱な光を高感度・低ノイズで計測する微弱光検出技術を使ったウィルス検査装置等の医療機器の説明がありました。HPには専門的な情報も掲載され、また医療機器商社との連携もあるとの説明で、十分に独り立ちしたベンチャーだと考えられ、当MINERVAへの登板の意味が納得しがたい印象を受けました。
- 2020.9.1
TEP事業計画プレゼン会(オンライン)に参加。
― 実に久しぶりの参加となりました。最初はエニシア株式会社小東茂夫氏から、大病院勤務医の過酷な労働環境を改善するカルテ要約ソフト「SATOMI」の説明がありました。京大発ベンチャーと言うべきで京大病院泌尿器科等で実証実験を行おうとしている段階です。医師の記入した電子カルテの内容を構造・体系化し要約して、医師の病歴把握を容易にし、診察の中身を高めようとするものとのことです。大学病院等の数は多くないですが、閉鎖的でかつ電子カルテシステム事業者も寡占と思われるので、どのようにシナジーを作っていけるかが課題だと考えます。次にリーグソリューションズ株式会社の大森能成氏から、単眼カメラで撮影するだけで高精度な3次元位置・姿勢計測が可能な高精度マーカーを用いた計測技術の説明がありました。誤差が1mm/Mとのことですが、マーカーも結構大きなもの予め貼付しておく必要もあり、どこに具体的なニーズが有るのか良く分かりませんでした。HPを見ても説明は簡単で、潜在ユーザが果たしてアクセスしてくるものか疑問を感じました。最後に株式会社MAZINの角屋貴則氏から、製造工程の個別課題の解決を低コスト短期間で解決できる製造工程IoT化パッケージ「Zシリーズ」の説明がありました。製造現場の工場(ex. エンジン工場)>製造ライン(ex. カムシャフト製造ライン)>製造工程(ex. 切削工程、切削工程)という階層構造を分析していくと、別会社の各工場の工程にあっても共通の課題がありこれを抽出して解決策をソフト化したということです。我が国の中堅・中小企業は、残念ながら大手メーカーのロボットやセンサー等の機器を使って新規に設備投資し生産性を上げることは少ないと思うので、同社のアプローチは意義があるものと思われます。同社も自社工場を保有してモデル工程化しノウハウも深めて行きたいと考えているようですが、大手製造業へのモジュール的部品販売にも傾斜し、HPもユーザを絞った内容となっていないようで、資金の調達も、方向性を決めて具体的に動いていくべきと思いました。
- 2020.8.29
早稲田大学「シンガポール/アジアのIT講義」終了記念シンポジウムに参加。
― 主宰者はWAAの主宰者でもある田辺孝二氏で、本講座はパナソニック社の寄付講座として2001年から継続してきたものとのことでした。パナ社の貢献と田辺氏の奮闘に大いなる敬意を表します。田辺氏がシンガポールに勤務したこともあって同国のIT政策に焦点を当て、その後東南アジア諸国のIT化にも関心を広げ現地訪問、現地機関との協力等幅白い観察を続けてきた訳ですが、この間に情報化は先進国・途上国・後進国と言う区別を無意味にする進展を見せてきたと思います。その先頭に居たのがシンガポールと考えますが、同国元経済開発庁副長官チュア テック ヒム氏から「デジタル時代の大局を見る‐企業、産業、社会の発展への影響」のタイトルで、世界のIT技術の進展が国境を越え人種を超え過去・現在を超え継続していくものであり金本位・石油本位時代に続く情報本位時代の到来と言う大きな視点で見るべきであるが、同時に多様な社会構成要素の矛盾をも顕在化させるので、新しい秩序を形成する力・調整力が一層必要となるとの説明がありました。次に田辺氏と共同で本講座を担当してきた(一財)日本情報経済社会推進協会常務理事山内 徹氏から「アジア諸国のデジタル化が日本に示唆するもの」のタイトルで、主に我が国中央・地方政府のパッチワーク的なIT政策と政策実施部署の問題の説明がありました。田辺氏からは「シンガポールの「未来創造思考」」とのタイトルで、時代の先を読み取りながら進めてきた政策、時代の先取りを担う人材育成の典型が情報化対応であることの説明がありました。シンガポールの特色を考えてみますと、長期間の有力一党政権の下で国家のレゾンデートルを再確認・再生産し、その生存のための競争力を如何に先取りで高めてきたかに尽きると思います。一方、我が国の情報化の問題は、山内氏が講義において学生から問われたと説明された“国民一人毎のIDの義務的付与とその利用”について、明確な解を与野党もメディアも学界も産業界も持ち得ていないことに尽きるだろうと考えます。情報本位時代においては誰が情報を保有し、如何に利用するかのコンセンサスが必要になりますが、世界の大寡占情報企業GAFAを有する米国においてもそのコンセンサス作りを行っている途上です。効用を高く他者による情報支配と感じさせられない情報本位社会が本当に到来するのか、色んな事を考えさせてくれたシンポジウムでした。
- 2020.8.28
NRW Japan K.K. Fireplace WebTalk: Current Hydrogen Strategies in Europe, Germany and NRWに参加。
― 今回の講師は、前回と異なり総てドイツ側で、日本側は質問者の立場でした。日本の政策当局は国土省か経産省かと言う問題もあり、産業界ではトヨタ以外には目立った動きが無いせいかもしれません。最初に、NRW州政府から燃料電池・水素・e-モビリティ・ネットワークNRW代表 Dr. トーマス・カッテンシュタインから「ヨーロッパ、ドイツ、NRW州における水素戦略の現状」のタイトルで説明がありました。水素製造事業者と利用事業者との連携、水素の運搬のためのパイプライン利用、風力発電由来エネルギーの利用のためのオランダとの協力等が印象的でした。次に、thyssenkrupp Uhde Chlorine Engineers社グリーン水素事業部長 Dr.クリストフ・ノエレスから「産業セクターがグリーン水素を推進する最も重要な担い手である理由」のタイトルで説明がありました。thyssenkruppは製鉄・産業機械メーカーとして歴史のあるドイツ有数の大企業ですが、その一製鉄工場での水素製造とアンモニア転換による輸送、国内輸送ネットワーク等の説明がありました。高炉で生じるコークス炉ガスには水素が含まれており鉄鋼メーカーが水素製造を担うことは自然ですが、国内輸送ネットワークまで対象とする事業構想に感心しました。最後に燃料電池エネルギーセンター(ZBT:Zentrum fur Brennstoffzellen-Technik GmbH)社取締役Prof. Dr. アンゲリカ・ハインツェルから「タイプ別電気分解技術の運用事例」の説明がありました。同社はUniversity of Duisburg-Essenの大学発ベンチャーともいうべき組織で、燃料電池の評価よりも電気分解の効率向上のための研究開発の状況が主だと思いました。枯れた技術であり、飛躍的な効率向上は難しいようですが、触媒その他の組合せで効率が漸増しているようでした。燃料電池の評価は日本製を含めて同センターで大規模に行われている様子でした。日本側からの説明が無かったことは残念ですが、ドイツ側からの積極的な情報発信とNRW政府の努力に敬意を表します。
- 2020.8.27
NANOBICナノ茶論第1回セミナー「マイクロ波選択加熱の利用 〜電子部品実装や天然繊維の高機能化など〜」に参加。
― コロナの影響で新年度分がようやく始まったようです。今回は産業技術総合研究所 化学プロセス研究部門機能素材プロセッシンググループ西岡将輝氏から、マイクロ波を熱伝達の媒体として活用し化学変化を進める応用技術の説明がありました。最初に、中空繊維(例えば綿糸)を機能性粒子・結晶の原料溶液(例えば硝酸銀)に含浸して繊維の空隙に原料溶液を浸透させ、その後、原料溶液と非相溶の溶媒(圧入溶媒)中に保持して脱気や加圧により原料溶液を中空部分に導入し、原料溶液に対応したマイクロ波加熱によって選択的加熱をして繊維の中空部分に所望の機能性粒子・結晶(ナノ銀粒子)を合成するプロセスの説明がありました。マイクロ波を利用した化学プロセスを実用化の例としては、阪大発ベンチャーのマイクロ波化学(株)がありますが、小電力で高効率の商業的化学プロセスを実現するために、モジュール型のコンパクトマイクロ波反応措置を直列で設置して量産化していく開発の状況の説明がありました。更に反射したマイクロ波を解析することで化学反応等の状態把握を行う技術の紹介もありました。良い事業連携先が見つかり、我が国の材料開発の競争力を高める新規事業となることを期待します。
- 2020.8.26
NPOインデペンデンツクラブ事業計画発表会に参加。
― KUROFUNE(株)の倉片 稜氏から、外国人が働きやすい・住みやすい日本社会を実現することを基本に、ベトナム外国人人材を対象に所得補償保険や自国送金の業務を展開する計画の発表がありました。前者は、三井住友損保との協業により、別途創設の「在日ベトナム人就業者支援協会」への参加が付保になり年間最大120万円の所得補償を行おうとするもので、後者は送金費用の安いネット銀行を通して本国送金を可能にしようとするものです。前者については公的保険を補完するものとして有意義なものだと考えますが、後者については海外送金については犯罪との関連性を金融機関がチェックする必要もあり(それがコストとなっている訳で)、潜在的に存在する送出し側の違法性の可能性をクリアできるのか疑問を感じました。特に対象国をベトナムから東南アジア数か国へ拡大していくとのことで後者のリスクは高まっていくと考えられます。また将来、ベトナムから米国への労働者の流れもカバーしようとする計画であり、米国の多様な規制を考慮していないものではないかと考えます。更に、登録されたベトナム人等の個人情報を使ったビジネスを予定しベトナム人等親睦を超えた物販サービス等に使おうとすることにも違和感を感じました。また同社のHPには、人材派遣企業登録や外国人技能実習生受入れ登録等についての記載が全くないことも気になりました。次に、(株)NOKIOOの小川健三氏から、地方中核都市で特に女性の活躍を進めて地方企業の活性化を進めるためにITスキルを含めた知見の修得・研修等をオンラインで行い人材紹介を行う、更には、同モデルを他の中核都市の代理店を通して展開する計画の説明がありました。狙いとしては正しく実績を上げて行って欲しいと考えますが、研修にはフェースツーフェースのプログラム化できない部分があり、これをどうしていくのか、このような研修・人材育成ノウハウが他の中核都市の代理店にうまく移転できるのか、疑問を感じました。
- 2020.8.24
信州大学JST新技術説明会(一部オンラインとWebサイトでの技術紹介)に参加。
― 3件のうち、1件が20日にオンラインで、残り2件は24日にWeb掲載されました。20日に3件とも説明資料を掲載することが、同日オンラインで積極的に説明を行った先鋭領域融合研究群先鋭材料研究所高坂泰弘氏の努力を高め、同大への関心を深めることになると考えます。高坂氏は「モノマー・重合のトータルデザインが導く機能高分子材料」とのタイトルで、アクリル酸エステルやアクリルアミドに選択・予定的に機能団や基を結合させ新規の機能性有機材料を合成していく方法を説明していました。企業との共同研究等の実績多くがあり、更に大学から企業への技術移転、特に地元企業への移転が進むことを期待します。2件目は、工学部物質化学科影島洋介氏の「光触媒粉末から成る半透明電極とそれを用いた水分解タンデム型セル」で、透明導電性基板(ITO/ガラス)上にチタニアナノシート(TNS)と光触媒微粒子の両者を結着・塗布したものを電極とすることで、太陽光照射による水の全分解を可能にしようとするものです。多孔性で水分子が移動可能な基板材料の開発も必要で、面白い内容ですが開発要素は多そうです。3件目は、工学部電子情報システム工学科田久 修氏の「素早く正確に無線チャネルの空席を見つける」で、時々刻々と混み具合が変化する電波状態で空きチャネルを迅速かつ正確に予測するため、従来のメモリ法の追従性と重み法の安定性を兼ね備えたうえで占有率の変化で判断する新方法とのことです。詳しいことは分かりませんが、既に企業との共同研究がされているのではないかと思いました。ともあれ、スケジュールについては再考をして欲しいところです。
- 2020.8.20
空間探査技術を使った製品イノベーションDiscover better designs, faster!セミナーに参加。
― 多数のCAD・CAEツールと連動して設計空間探査を行えるSiemens Digital Industries SoftwareのHEEDSの説明と、これをクラウドで使う例の説明がありました。主催は(株)電通国際情報サービスで、従来から時にセミナーに参加しています。今回はオンラインでAdobe Connectを使ったセミナーでしたが、本アプリは初めての利用で音声が聞こえないというトラブルに見舞われ、一部の視聴のみでした。従来からSiemensのCADや評価ソフトには敬服していましたが、今回は試みのオンラインセミナーで、一部視聴でしたので、内容の理解までには至りませんでした。中小企業や中堅企業の設計担当者が積極的に利用して何とか21世紀を生き延びて欲しいと思って見ておりました。
- 2020.8.18
金沢大学JST新技術説明会(Webサイトでの技術紹介)を見る。
― 全部で7件の紹介がありますが、そのうち3件について感想を述べます。最初は、理工研究域フロンティア工学系得竹 浩氏の「自動運転の手動運転切替え時に事故を防ぐドライバ状態推定」で、自動運転状態での運転手の注意集中状態をアイトラッカーで視線方向を計測観測して判断するシステムを開発しようとするものです。自動運転時のドライバだけでなくプラントオペレータ等の注意力推定に利用しようとするものですが、ソフトウェアは研究室で開発可能ですが、現実には、実際の運転時に利用可能な実際的で信頼性のあるアイトラッカーが実現するのかが課題だと考えます。2つ目は、理工研究域電子情報通信学系川江 健氏の「エッチング装置・薬液を必要としない、酸化物薄膜の微細加工技術」で、水に可溶かつ耐熱性に優れるアモルファス酸化カルシウムを使い、従来方式では必要なイオンエッチング装置や強酸などの環境負荷の高い薬液を要しないフォトリソグラフィの微小加工を可能にしようとするものです。意欲的だと思いますが、企業との共同研究で商業化に向けた精度、再現性等の実証が必要な技術だと思います。3つ目は、医薬保健研究域薬学系谷口剛史氏の「置換ポリアセチレンの末端構造を自由に設計できる精密重合法」で、市販の触媒と試薬を組み合わせて置換ポリアセチレンの末端構造を思い通りに設計でき、本リビング重合法で得られるポリマーの分子量、分子量分布、立体規則性が制御可能だというものです。得られた物質の構造や特性、安定性の見極めは課題とのことで、企業・第三者による検証が必要だと考えます。後は、抗がん剤、癌免疫療法、膠芽腫診断マーカー等の技術が紹介されています。医療関係についてニーズは確かにあるので、関係機関が臨床の費用、時間、製品の価格等をどのように評価するのか、これによって陽の目を見られないものが結構多いと、毎回考え込む課題があります。
- 2020.8.12
NPOインデペンデンツクラブオンライン事業計画発表会に参加。
― ベンチャー企業の支援、事業計画発表の場の提供等長く活動されてきていることは承知しておりますが、具体的な発表会への参加は初めてと思います。最初に、(株)ジースヌーズ北 健人氏から、幾つかの大企業での人事畑の経験を活かして従業員のアイデアや提案、モティベーション、不満等を収集し優先的に解決・採用すべき課題等を示そうとする組織支援クラウドサービス「Askit(アスキット)」の説明がありました。同社のHPが無いため発表会での説明を再現しての判断は難しいのですが、人事・労務管理のソフトは非常に多く、構成員一人一人との意思疎通が困難になる数十人規模の組織や、支店長の下の構成員が見えない多支店・多店舗の組織を対象に売り込む方が面白いと感じました。2社目は、ロボセンサー技研(株)大村昌良氏から、ピエゾフィルムを芯線に巻きつけ直径0.5mmの極細同軸ケーブルとして形成した「ピエゾ電線センサー」をIoTの振動情報収集に利用するための生産・販売等の資金計画、更にはしなやかなこと、自己発電により無電源であること等の特性を活かして医療分野に応用使用しようとする今後の計画の説明がありました。非常に面白く大手企業の使用例も多く報告されていましたが、今後本格的な製造をどこかのメーカーと組むのか、単独で資金を調達して生産するのか、更には収集した情報をどのように解析するのか、単にユーザに任せるのか等疑問点もありました。何らかの割り切りを行うべき時期であろうと思います。最後に、進め方として、本会の主宰者とスポンサーからプレゼン終了後に逐一コメント等が示されるのですが、参加者からの質問やコメントを単に集めて説明者にフィードバックする方が、参加者(資金提供者やユーザ等)に予断を与えないで良いのではないかと思いました。従来から参加しているミネルバの事業説明会の方式(名刺交換を順次行って、後でコンタクトする)の方がどうも適切だと考えます。
- 2020.8.8
慶應義塾大学JST新技術説明会(Webサイトでの技術紹介)を見る。
― Webサイトでは7月30日に説明資料が公開されています。最初は物理情報工学科 門内靖明氏の「テラヘルツレーダーによる透過型振動計測:着衣状態のまま心拍動を非接触計測」です。テラヘルツ波を使って小型化しかつ透過性を高めることで非接触の計測の範囲を広げ、かつ微細波長の電波の変化・乖離・重なり・ずれ等を検出・補正する等によって微小・遠隔・移動中の物体の動きを把握しようとするものであると理解します。次に生命情報学科 松原輝彦氏の「脱ニュートンのリンゴ:繊細な生体物質を触れずに操る方法の開発」で名称はミスリードです。音波を使って空中に浮遊させた状態(全方位非接触界面)で物質の化学変化を起こさせようとするもので、研究室で多用されるプラスチックやガラス容器を減らしかつ接触によるコンタミや無用の反応を防ごうとする目的のものです。果たして音波が悪影響を与えないのか、浮遊物質が重く成れば強力な音波が必要となりそれが阻害要因にならないのか、説明資料では不明ですが、発想が非常にユニークではあります。次は機械工学科 閻 紀旺氏の「シリコンナノ粒子の製造方法及び装置」で面白さを隠した名称となっています。ワイヤソー等から排出されるシリコン切りくずにレーザを照射して結晶化されたシリコンナノ粒子を再製造しようとするものです。切りくず量に依っては製造現場で回収した屑をその場で再結晶させることで経済性も見えてくると思われます。最後に情報工学科 大槻知明氏の「非接触による心拍検出方法」で、ドップラーセンサで得た情報から雑音(遅れ・重なり・興奮状態と安静状態との差等)を解析除去して正しいキレイな心臓の鼓動を得ようとするものだと理解します。恐らく健診等での非接触検出には意味があるのではなく、ドップラーセンサーからの情報を解析するソフトに意味の有る研究であろうと思います。やはり産官連携の説明会としては、研究者同士では学会論文で十分であり、重点の置き方、熱意等を示す当事者の説明が必要であるので更に工夫をすべきと考えます。
- 2020.7.31
NRW Japan K.K. Fireplace WebTalk: Micro and Nanosystems Innovation in NRW - a Key to COVID-19 Instant Diagnosticsに参加。
― ドイツNRW(ノルトライン・ヴェストファーレン)州の日本代表事務所が主催すしてドイツのマイクロ・ナノ技術を活用するコロナの革新的即時診断システムの紹介を目的とするオンラインセミナーで、「炉端会議」と称する一連のセミナーの一環でした。NRW日本事務所には、先の中堅企業に関する研究会の際に紹介を頂きました。Fraunhofer Institute for Microelectronic Circuits and SystemsのKarsten Seidl氏から、半導体チップを使用する非接触の診断技術、臨床での診断機器の紹介がありました。特定の情報を取得して分析する半導体を設計製作してスマートセンサーとして普及させようとしている活動だと理解しました。ドイツではソフト技術の開発が課題だと思っていましたが、Fraunhoferのような先端的組織が、基礎的な要素技術からソフトを含む応用技術・製造技術までの開発を牽引しているのだ実感しました。日本側からは東北大の阿尻教授から、超臨界水反応を活用したナノレベルの無機・有機物質の合成、これら物質を含む多様な新規材料の製造の紹介と、関係教授による医療分野での診断技術の紹介がありました。更には同教授の主導で2018年に、この超臨界水熱合成法を用いて個別ナノ材料の設計と合成、装置基本設計・受注生産販売を行う(株)スーパーナノデザインを設立した話がありました。直ちに日独のこの両者で共同研究が進むのかどうか分かりませんが、日独の多くの企業のニーズに応えて相互で交流が進むことを期待します。
- 2020.7.29
The Insider by 500 Startups: Scaling Your Startup to the US or Southeast Asia through 500 Startups’ Global Launch Programsに参加。
― 以前に500 Startups主催のセミナーに参加したことが有り、開催の知らせが来ましたのでオンラインで参加しました。500 Startupsの幹部やスタッフからGlobal Launch Programsの説明がありました。背景は良く分かりませんが、コロナ禍で米国への移動が難しくなったこと、サンフランシスコで活動するコストが高くなったこと、元来500 Startupsの幹部はアジア系であること、マーケットはアジアの方が成長が高いこと等から、シンガポールとサンフラシスコを拠点とし、メンタリングや資金提供等をオンラインで行おうとするのではないかと考えます。日本人がどのぐらいこのセミナーに参加したか、また、日本のスタートアップがどのように応募するのか、500 Startups Japanがどのように噛んでいくのか等、全体が見えないので分かりません。英語を基本とし、日本外の市場をターゲットとするので、我が国の存在感は小さいものと予測します。それにしても、かつてはシリコンヴァレーがキーワードでしたが、これがサンフランシスコとなり、アジアのハブがシンガポールになりつつあることを改めて感じました。
- 2020.7.24
京都大学新技術説明会・Webサイトで開催に参加。
― 当初は21日にPPTの説明資料をWebサイト上に掲載するとのことでしたが、結局22日の遅くに掲載されスケジュールの都合で24日に内容を確認しました。予定通りやって貰いたいのと、先日の東北大の説明のようにオンラインでの説明も無く研究者の力点の置き方、熱意等は伝わってこない点で、やはり短時間でもオンラインで説明する方式として欲しいと思いました。最初は、エネルギー社会・環境科学専攻小川敬也氏の「窒素の処理方法、窒素原子含有材料の製造方法及び混合物」で、常温常圧において、窒素雰囲気下でチタン粉末とポリエチレンのプラスチック片を混ぜ振動させるとチタン粉末表面が窒化し、これに水素を500度Cで吹きかけるとアンモニアが得られるとの説明がありました。非常に単純な条件でアンモニアが得られる面白い内容だと思います。まだまだ量産化に向けて解明すべき点は多いと考えますが、良い提携企業が出て来て実用化に近づくことを期待します。次に、電気工学専攻イスラム・マーフズル氏の「順序統計量に基づいた集積回路の新しい設計技術」で、アナログの集積回路の製造上素子間の特性ばらつきに起因して必然的に発生する性能の誤差(幅)を製造後のキャリブレーションや回路追加で対応してきたのを、順序統計を用い特定の特性をもつ素子を選択することによって解決しようとする理論的な提案がされています。全く初めて知る話で同氏の提案が解になるかどうか不詳ですが、順序統計を用いた素子選択のためのアルゴリズムの開発とそのための素子も必要で簡単なものでは無いと考えるものの従来の回路開発者の延長の発想ではない点が大学から出てきた点に興味を持ちました。我が国の企業にこれを受け止めて共同研究できるところが出てくるか疑問です。次に材料工学専攻北田 敦氏の「銅ナノ粒子蛍光体を大気中で自在に作製する方法」で、銅化合物、カルボン酸等の塩基性混合溶液に対し120度C 未満で紫外線を照射して銅ナノ粒子蛍光体を生成する方法の説明がありました。銀・金のナノ粒子代替の可能性を持つとのことです。他にも幾つか説明がありますが、以上にしたいと思います。コロナ禍におけるオープンイノベーションや共同研究に今後どのような影響が出てくるかも考えさせる説明会でした。
- 2020.7.16
東北大学オンライン新技術説明会に参加。
― 久しぶりの新技術説明会でした。東北大らしい材料を扱った説明であったと思います。最初は、航空宇宙工学専攻大西直文教授による「イオン風による表面流制御デバイスの高集積化による低電圧駆動技術」というタイトルで、放電により生成されるプラズマを利用した流体制御技術であるプラズマアクチュエータとして、プリンテッドエレクトロニクス技術を使い高圧電源が不要で自由度の高い表面流を生成できる素子を開発したという説明がありました。初めて接する内容であり理解できていませんが、結構ニーズの有る分野であるとのことで、昔聞いたプリンテッドエレクトロニクスの応用例として実用化に進んで欲しいと思います。2つ目は、化学工学専攻長尾大輔教授から「外部電場で特性が可逆制御可能な新規光学素子の開発」というタイトルで、シリカ外殻の表面に空隙を有する微粒子に、目的機能を発揮させる別の金属等の微粒子を閉じ込めた素子を構成要素とした新規光学デバイスの説明がありました。外部微粒子の内部でランダムにブラウン運動している機能微粒子を、電場・地場で運動・配置を変化させて制御し特定の機能を発揮させようとするもののようです。初めて聞く話ですが、コペルニクス的な発想の転換を感じさせる内容で面白く感じました。最後に、材料システム工学専攻佐藤 裕教授から「樹脂/金属を簡便かつ強固に接合する技術」というタイトルで、ポーラス化した金属表面に樹脂を含侵させて樹脂/金属の強固な接合継手を試作したとの説明がありました。自動車の軽量化等の要請から樹脂と金属の接合技術の開発は古くからあり、かつて、筆者が会員であるTEPの活動としてこの分野のベンチャーを支援したことが有りますが、全国的にはまだ実用化には遠い状況のようです。岩手県工業試験所との共同開発である点も意義あると感じますが、金属をポーラス化する量産的技術は開発されていないとのことでしたので、結構大変だと思いました。
- 2020.7.14
第218回MINERVAビジネスプラン発表会に参加。
― 久しぶりの顔を合わせての発表会参加でした。窓を開けてエアコンによる換気をしていましたが、事業計画の発表は発表者の人柄等を見る必要があり、オンラインでは不十分だと思っているものの悩ましいところです。さて、最初は、(株)AGREEから、24時間医師からスマホを通して健康相談・医療相談の助言が貰えるサービスと、コロナウィルス禍の対策として茨城県や幾つかの市町村による同社のサービスを使った取組みの説明がありました。筑波大卒の伊藤氏が創業した社会課題解決のベンチャーで2.7億円の資本金を集める等十分な認知を得て活動を展開している印象でした。2社目は(株)アドバンストアールエフデザイからン小エネルギーで長距離に電波を飛ばせる通信モジュールの自社開発技術と製品の説明がありました。何時も思うことですが、研究開発型ベンチャーとしてJAXA/東大の人工衛星にも搭載された実績から要素技術を探索しているユーザが多いはずですが、同社のHPには技術の詳細説明等がないためユーザとの接点が作れないのではないかと思います。3社目は(株)アフロイアから、カラー染めから生じるダメージを修復するトリートメント処理剤の説明がありました。美容師の問題意識で開発した商品とのことですが、共同開発者や商品の成分の説明等詳しい情報の掲載されたHP造りが、やはり顧客や同業美容師から関心を持たれる第一歩だと思います。最後に(株)総合電商当社から、6600Vの高圧受電装置キュービクルの設置者からの買取りと新電力会社からの設置者への電気購入仲介事業の説明がありました。元の設置者は自己資産の保守から解放される代わりに新電力会社から電力を購入しその際に紹介料を同社に払うというビジネスモデルのようですが、今後新電力会社との買電コストに差が無くなるとどうなるのか、キュービクルを複数事業者の共同利用装置とすると事業は成り立ちそうですが近隣にうまく他の事業者が存在するのか、理解できないところがあります。ただ、既存の技術・装置・製品を上手く組み合わせてビジネスとし、北海道から全国展開をしている点は立派だと感心しました。
- 2020.7.7
ロボットサービス:Message from a venture companies Online企業マッチングin新川崎に参加。
― 実に半年ぶりにこのようなイベントに参加することができました。オンラインでの会議で、実際に講演者の話を聞き人柄を見ながら、どうすれば当該企業・講演者が発展して行けるかを考えてきた者としては、物足りないところもありましたが、限られた制約下での主宰者、講演者の苦労・努力に敬意を表したい気持ちでした。登場した企業は新川崎の「かわさき新産業創造センター(AIRBIC)に入居している企業で、最初は、TEAD(株)の河野拓雄氏から、ラジコン利用からドローン利用の事業へと転身し、飛翔の実績と経験を活かして農場・山林分野で行う農薬散布等のサービスの説明がありました。残念ながら国内産ではなくDJI製のドローンによるサービスでしたが、我が国の農場・山林の特徴(狭いところに樹木が多い等)を活かし、自動接触回避・事故防止・自動飛行の付加機能を持つ機器の開発を進めて欲しいと思いました。2社目は、(株)イクシスの山崎文敬氏から、各種インフラの現場をロボット・IoT機器を用いて3次元デジタル化し、当該施設の現状解析、保守箇所の特定等を行っている説明がありました。更に情報解析を深化・進化させ保守工事の将来予測を行いたいとのことでした。同社が使用するロボット等の国産での開発を期待したいところです。最後にGBS(株)山下英夫氏から、親会社であるGerman Bionic Systems GmbH が開発した重量運搬用の装着ロボットCray Xの説明がありました。軽小化を進めるに当たっては小型の性能の良いバッテリーの開発が必須と感じました。また、装着ロボットにIoT的センサーを付けてサービスを高度化したいとの説明がありましたが、重量運搬に特化したシンプルで安いモデルを是非完成もして欲しいところです。いずれも我が国社会の老齢化・少子化を先取りした課題解決を事業機会とし、ベンチャーから本格的な企業に成長して行く可能性がある企業であると感じました。
- 2020.2.12
第214回MINERVAビジネスプラン発表会に参加。
― 最初は、ファーストネーションズ(株)杉山寿之氏から、チタンアパタイトと銀ナノ粒子を塗布して殺菌効果を保有させたCCFL(冷陰極管)の説明がありました。既に導入実績も有り、LEDのような青色問題がないとのことで、引き続き期待が持てる製品だと思います。現在は台湾メーカーにOEM生産を委託し、東証一部上場のカメイ(株)を総発売元にその傘下に幾つかの独立の販売ネットワークを有しているとのことです。今後、器具一体型等の製品開発のための資金調達を行いたいとのことでした。現タイプの据付けには簡単な工事が必要であるのでこれを不要にしたコンパクトな製品が必要と思います。同時に、新規の開発と販売に新たな責任体制が必要だと感じました。2社目は、バリューソリューション(株)から電子機器(監視カメラ・デジタルサイネージ・ATM 等)の再起動を要するフリーズ状態を遠隔で監視し自動的に再起動処理を行う製品の説明がありました。ルーターが落ち再起動が必要になる経験はしていますが、フリーズが事業用の多様な機器で発生している状況に有り、今後5G、IoT等により家庭を含めて頻繁に発生すると予測されるトラブル対策を行う小型で安価、使い勝手の良い新製品の開発を行おうとするものでした。最後にSANSHO(株) 諸星俊郎氏から、お茶の水女子大発の新規医薬候補であり、変形性膝関節症向け臨床試験を台湾で行っている2ccPA(2-カルバ環状ホスファチジン酸)化合物の展開について説明がありました。残念ながら、現臨床試験で不足している資金の調達なのか新規の多発性硬化症向け臨床試験の資金調達なのか、説明ではよく理解できませんでした。国内では臨床向けの資金調達は製薬会社から行うしか方策は無さそうであるので、台湾等海外からの資金調達を模索する方が早いのではないかと感じました。
- 2020.1.29
TCICセミナー「5Gが来る!〜5Gによるビジネスの変革と活用を探る〜」に参加。
― 東京コンテンツインキュベーションセンターにおいて、ソフトバンク(株)の山本佳樹部長から、5Gとは何かとのそもそも論、これによる社会・産業分野への影響等について話を聞きました。現在の4Gに比して大容量通信が可能となり、情報処理の遅延性が極小に止められること等から、自動車の無人走行実験やスマートシティ実証と言われているものが実用に一歩進むことは理解できましたが、我が国の産業競争力の向上や地方における雇用の維持・創出にどのように結び付いていくのか、具体的なイメージは作れませんでした。また、実際の応用面は画像データの収集・処理、仮想的映像の制作が先行するとのことなので、コンテンツ業界にとっては身近な変革ですが、今のスタートアップにとって過去の延長でない新規のビジネスモデルが生まれるのか、よく理解できませんでした。ただ、画像情報の処理をAIと結びつけると、一億総モニター社会での行動予測分析とその利用の事業は拡大すると思いますが、果たしてそれが望ましいものかどうかは、疑念は残ります。従って、政府が進めている「特定ディジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上法案」の背景には、このような5Gの利便性と影のバランスをどう取るかという問題があるのだろうと感じました。ただ、28G 帯が通信事業者以外にも開放されるということでしたので、例えば、ディズニーランドやサファリパークのような“閉鎖”空間で入場者を対象に、リアルなモノと画像処理によるモノを混在させたワンダーランドのようなものは創れそうだと思いました。そうなれば新産業の創出と地方での雇用創出にも繋がるかもしれません。
- 2020.1.21
JST新技術説明会(健康・医療)に参加。
― 1年ぶりの参加です。健康・医療の横断分野で幾つかの大学からの説明でした。「電気化学発光による薬物の検出」とのタイトルで信州大学理学部高橋史樹氏から、高額な試薬等を必要とせず簡便にポータブルな装置により現場等で覚せい剤を検出する分析技術の説明がありました。電流を流すことにより励起状態になった特定の化学物質(覚せい剤)が光を出して基底状態に戻ることを利用したもので、キャリーバックに収納できる検査装置を目指しているとのことでした。警察等が購入することが明確であれば民間企業がスポンサーになって実用化されると思いますが、微妙な難しさを感じました。次に、「植物におけるタンパク質大量発現「つくばシステム」」とのタイトルで筑波大学生命環境系三浦謙治氏から、タバコ等の植物に医療用のタンパク質を生成させるよう遺伝子操作等を行うことで、植物工場等で短期間に目的タンパク質を比較的大量に収取する手法について説明がありました。過去10年近く企業との連携も進めて来ており、目的タンパク質を更に絞らずに現時点で他の企業に参加を求める理由が良く分かりませんでした。「高速細胞単離装置」とのタイトルで芝浦工業大学システム理工学部花房昭彦氏から、手術室の現場で取得した腫瘍細胞を単離し悪性度を確認するため、現状の1/10以下30秒で単離確認できる簡単な装置の開発を行ったことの説明がありました。学際的協力と院生のアイデアと3Dプリンターの活用の成果で楽しみのある技術だと思いますが、残念ながら国内特許出願だけなので市場としては狭くなるリスクを感じました。
- 2020.1.15
NANOBICナノ茶論第9回セミナー「磁気の源「スピン」を用いた新しい熱エネルギー制御技術」に参加。
― 新川崎に川崎市が設置した「創造のもり」のNANOBICにおけるナノ技術に特化し先端の動向を一線の研究者が解説するセミナーで、久しぶりに参加しました。今回は、材料研の磁性・スピントロニクス材料研究拠点・スピンエネルギーグループのリーダーである 内田健一氏から、磁気の源であるスピンの自由度を利用して、熱を一方向だけに伝える、局所的な温度変化を生じさる等の新しい熱エネルギー制御機能につての説明がありました。エネルギー保存の法則からすれば、電子のスピンを変えるために投入したエネルギーが磁性体中のどこかを発熱させたり、電流変化を起こしたりすると言うようにざっくり理解しました。利用分野としては半導体の一機能としての活用との説明でしたが、投入エネルギーである光と磁気と電流を相互に制御できる分野が広がることはチャレンジングであり、我が国の若手が先導している技術が実用化に近づくことを期待します。
- 2020.1.13
(公財)OAGドイツ東洋文化研究協会第154 回シーボルト・ゼミナールに参加。
― 今回は、シーボルトが二回目、幕末に再来日した際に持参した1200冊に及ぶ図書を、その時同時に来日してそのまま日本に滞在することとなった息子アレクサンダーが外務省等に寄贈したものを、OAGがどの程度引継いているかを調べた結果の報告がありました。オランダの研究者からの照会だとのことですが、改めて、シーボルトの我が国に対する思い入れと帰国後の影響力について考えました。シーボルトの評価については文献や図書によって異なり引き続きの興味の対象ですが、何事も専門化が進みトータルでモノゴトを考えなくなってきた現在において博物学ないし総合科学がやはり重要・必須であることを強調しておきたいと思います。