- 2018.12.11
第203回MINERVAビジネスプラン発表会に参加。
― 今回は4社でした。最初は恵比寿十四(株)齋田和夫氏からチラシ等の写真をスマフォで送信させて商品・サービス等の説明を行う動画を表示するサービスの説明をしていました。2社目は(株)ミライエ島田義久氏から、鳥取県が開発した「発泡ガラス式脱臭法」による従来の4倍の効果をもつ脱臭装置の商品開発と販路拡大について説明をしていました。既にゴミ処理施設や大手製紙工場などに納入しており、今後は遠隔制御型のユニット型製品を開発し市場開拓を目指したいとのことでした。3社目は(株)日本テクノリソース朝比奈正氏から、電波利用効率を飛躍的に高める独自符号型データ通信方式CPS(Corelation Powered by Spread)の説明をしていました。技術の内容の説明が無くまた通信分野の国際標準をどのように進めるかの説明もなく、不詳で終わりました。4社目はスタイル・ジャパン・アソシエイツ合同会社町田佳子女史から日本で最小かつ一番海に近い都市型ワイナリーのコンセプトで進めている横浜市内醸造所の説明でした。都市における地産地消と都市農業の変革を狙う着眼点は良いと思いましたが、一人でやっていることに限界があり、これを増資で対応しようとしているものでした。昨日の500Startupsとは大違いで高齢化の中で従来型の技術指向的な起業を行おうとする者の集まりでしたが、背景の社会ニーズは感じ取れました。1社目からは、若い世代の80%はプッシュ型の広告メールには反応しないこと、2社目からは海外からの農産物自由化の圧力が高まっていく中で一層の飼育等の大規模化を迫られそれに伴う悪臭対策等が重要になって行くこと、3社目からは電波の利用効率の向上は国際的課題になっていること、4社目からは都市におけるニッチ市場がまだ存在していること、等を考えました。
- 2018.12.10
500Startups+Kobe City Accelerator Demo Day in Tokyoに参加。
― シリコンヴァレーの500Startupsが神戸市と提携して、東京の投資家に向けて行うイベントで、日本のほかアジアアフリカ出身の起業家合計18人が順次説明するピッチ会でした。18人が持ち時間一社当たり3分程度、計1時間弱で説明するので、初期投資というよりは、ある程度目鼻の付いた事業への追加投資を対象としていました、3分でも十分理解させることは可能であることを再認識ましたが、やはり短時間の説明ではスマフォを使うアプリに限られるようでした。集中医療専門医が不在の病院に遠隔からサポートする専門医出身の中西氏が社長であるT―ICU、農作物の成熟状態や土壌情報等を総合管理して農家の知見をサポートするSAgri、建設現場の技能者に特化した求職サイトshokunin-san.comが印象に残りました。今のピッチ会がどこでもこのようなお祭り的バライティ番組のような雰囲気で行われるとすれば相当のカルチャーショックでした。それと神戸市長は最初から最後まで居ましたが、神戸市のインキュベーター施設を使っている企業の方が少ないようなのでこれも違和感が残りました。若い世代は悲愴感ではなく楽しみながら趣味的に起業を行う時代に変わっているのかもしれません。
- 2018.12.7
富士通総研中国通セミナー「老いゆく中国社会の課題」に参加。
― 柯 隆氏による現在中国の抱えている諸問題・諸矛盾を、高齢化社会・介護政策の切り口で浮かび上がらせた講演でした。我が国と同じような速さで高齢化が進んでいる中で、共産党幹部や国有企業等の幹部の富裕層にとっての高齢化と、地方農民層や都市労働者にとっての高齢化との間の圧倒的な諸施策の差をどのように埋めて行きながら、介護保険的な全国家的な制度の導入ができるのかという問題提起でした。根底にある恐るべき貧富の差と階層的差は、既に建国以来数十年経って既得権益化した階級の固定化に繋がっており、IT活用の新興大企業のトップや幹部層の拡大はこの格差を縮めることには繋がっていないと考えざるを得ない講演の内容でした。この差を縮めるためのボトムアップとして中国製造2025政策がある訳ですが、既得権益化した国有企業の抜本的制度変革が無い限り表面的な模様替えに終わるであろうことも確かで、米中の対立の中ではこのような制度変革は政治的に一層難しくなるであろうと予想します。それにつけても中国の2045年の高齢化よりも、我が国の2018年現在の高齢化への対策の財源をどうするのか、その個別施策を誰が担うのか等を考えると、入管法改正に対する噛み合わない国会の議論、消費税の引上げに対する国民の反応等、足許の大問題を我々はもっと直視すべきだと思いました。
- 2018.11.28
新川崎・創造のもり「エンジニアからみた新規事業立上げのリアル」シンポに参加。
― ティーエスアイ(株)(旧テクノロジーシードインキュベーション(株))が関与している新川崎・創造のもりコンプレックスにおけるエンジニア主体のシンポでした。スタートアップのエンジニアがどのように起業・新規事業立上げに関わっていくかの経験を共有し、円滑な立上げと成長に繋げて行こうとする目的で、(株)CuboRe起業の寺嶋瑞仁氏、パナック(株)藻類新規事業立上げ責任者の佐藤剛毅氏、(株)Octatech新規起業のベテラン経営者でもある黒澤智明氏から、苦労話と現状の課題を聞きました。寺嶋氏は長岡技術大発の技術を活かした雪上的スケボーを開発生産していますが、新潟の保守的な風土と支援層の薄さについての苦労話を、佐藤氏は、藻類には全く関係の無い会社で自己の藻類学者としての知見を活かしつつ組織内でシンパを増やしながらサクセス事例を一つ作りが得るまでの苦労を、黒澤氏は自己学習で半導体回路設計の事業運営に携わりその知見を活かして自社起業を行うまでの苦労話を、それぞれ話してくれました。共通の課題としては、トップと直結しないと社内起業は困難であること、技術者が経営について理解するためには層の厚い支援機能が必要なこと、事業計画(ビジネスモデル)をエンジニアでも自分で作り論理一貫と無矛盾を自己検証すること、であったと思います。余り資金的な壁についてのコメントが無かったことが意外でした。新川崎立地の問題もあり参加人員も少なかったですが、等身大の目線で問題と克服を語った良い内容だと思いました。
- 2018.11.27
第27回NEDOピッチJ- Startup特集に参加。
― 久しぶりに参加しましたが、経産省とJETROとNEDOが共同で運営するJ- Startupプログラムとして支援者やVC等から推薦を受け第三者委員会が選考した92社のうちの5社に、オープンイノベーション・ベンチャー創造協議会の会員にプレゼンの機会を与えるものでした。Idein(株)、(株)mediVR、(株)アラヤ、(株)バイオーム、レキオ・パワー・テクノロジー(株)のからプレゼンがありましたが、いずれもベンチャー企業としては独り立ちし事業運営を行っているので、技術、ビジネスモデル等は一応完成したものだと思いました。前3社はAIと言われる分野に属し、4社目は眼にした昆虫等の映像を集積して生態系のデータベースを構築しようとするもので、5社目は無医村地帯で簡便に利用できる超音波スキャナー機器と診断処理を行おうとするものでした。ベンチャー叢出と支援が我が国において文化として定着してきたことを非常に喜ばしいと思いますし、起業家たちも博士号取得者が普通になってきたことも素晴らしいと考えますが、官(政府機関)が選定しラベルを貼るような仕組みが、ベンチャー叢出を継続させるための本当のエコシステムであるのか、疑問には思いました。オープンイノベーション・ベンチャー創造協議会も政府主導で創った集まりですが、上から旗を振らなければ既存の大手企業等がベンチャー企業を評価できないとすれば寂しい限りあり、ベンチャー企業が海外に出て行くためにJETROがサービスを提供する、NEDOが必要な研究開発補助金を提供することは当然であるものの、大企業とのマッチング等は当事者とVCが行うことだと考えます。
- 2018.11.27
横浜国大研究イノベーション・シンポジウム2018に参加。
― 昨年に続いての同大の地域企業との連携を構築しようとするシンポジウムで、今回のテーマは昨年を発展させたもので「ヘルスケアのために大学と地域が連携する‐Society5.0実現に向けたもう一つの提言」でした。最初に産学官連携推進部門長の金子直哉氏からSociety5.0の世界においてはディジタル化のプロセスを経て製造業を含めた事業の提供がサービスと一体となったものとなり、売切・所有の移転から顧客への自社事業のフォローとそれによる付加価値化が生じるとのパラダイム変化を示して、このような変化がまずモビリティとヘルスケアにおいて生じていると説明していました。その上で、同大の保有するリソース(同大の教官の知識を含めて)を企業との連携に活かす共同のプロジェクトを立ち上げたいとのポジションを明確にしていました。これを受けて、神奈川県の牧野義之氏から県の科学技術政策大綱に基づき、プレーヤーとして県産業技術総合研究所、県主導の殿町リサーチコンプレックス、武田薬品の湘南アイパーク、慶応大、横国等が連携の中で世界に発信できる製品とサービスを創り出す戦略と戦術を説明していました。この後、同大の丸尾昭二氏、下野誠通氏、大沼雅也氏から過去取り組んできて研究開発の内容と今後企業と取り組んでいきたい共同研究分野の紹介がありました。最後にパネルディスカッションとして、(株)日本医療機器開発機構(JOMDD) 、湘南アイパーク、横浜銀行からパネリストが参加して具体個別のプロジェクト支援の考え方について議論がありました。横浜国大のシンポジウムでしたが、県がイニシアティブを示す役割の大きさを感じましたが、このような県の方針が知事や担当者の異動で変更する他の例を思い浮かべながらそうならないことを期待したいと思います。
- 2018.11.21
知的財産研究教育財団「欧州各国における技術移転の実態に関する研究」報告会に参加。
― 同財団が特許庁から委託を受けて日本企業が欧州企業と連携することで技術移転円滑に受けられるように欧州各国の移転関連制度等の実態を調査しその報告を行うもので、ヘルシンキ大学に在籍中の押鴨涼子女史をマックスプランク研究所に派遣して調査した各国の実態を纏めたものでした。対象国が英・独・仏は勿論、北欧・東欧・南欧等合計13か国に亘るため、残念ながら発表時間1時間では詳細には亘れませんでしたが力作だと思いました。ドイツに関して、州の分権制度の下で研究機関と企業との人材の行き来が頻繁に行われている実態を踏まえたプラクティスについての説明が欲しいところでした。結論的には女史も指摘していたようにベルギー(ドイツと同じく州に権限のある分権国家)の知識移転機関(KTO)の活動に興味を持ちました。州間の競争があり、大学と企業が地域レベルで密接に繋がり、機関のトップがMBA経験者であり、更にKTO自身のネットワークがあり、ということだと思います。恐らく、その諸組織の間を人自体が動いている(ドイツのように)だと想像します。
- 2018.11.18
日本開発工学会第5回総合シンポジウムに参加。
― 所属している工学会の「我が国のモノづくり・コトづくりの再構築と第4次産業革命」と題するシンポに参加しました。最初に、前経産省製造局長で現内閣府政策統括官の多田 明弘氏から「我が国製造業に対する危機感と期待」との基調講演がありました。ディジタルトランスフォーメーションという根源的な変革の下で我が国の製造業は新しいパラダイムに対応しきれておらず、戦後来の組織と発想と人材と装置(工場等)の延長上で活動している。変革を実施し競争力を維持するには、大きなデザイン力と構想力が必要だがそれはトップダウンで経営者の決断によるものだという趣旨の話でした。2018年版ものづくり白書からの援用が多かったのですが、趣旨は「ものづくり」の言葉の呪縛から脱却して空間を跨る高次元の総合産業に移行することを言っていると思われるので、まずは白書の名前を「価値づくり白書」に変えて警鐘を鳴らすべきだと考えました。本シンポの直後に日産のゴーン氏の逮捕があり、価値づくりをトップダウンで実践していた同氏のことを考えると、皮肉な現実のしっぺ返しとも思えます。その後は、北陸先端科学技術大学院の小坂満隆氏から「第3世代のサービスイノベーションと価値創造」、飯田グループホールディングスの西河洋一から「サービスイノベーションで良質な住宅を安価に提供」、東洋製罐グループホールディングスの佐藤一弘氏から「研究開発におけるディジタル化の進展」、慶応大学の大槻知明氏から「スマート・ヘルスケア」の講演がありました。それぞれ取り上げた対象が異なるので一貫した感想は難しいですが、従来の3次元的製造業から、俗にいうサービス化に加えて、空間・時間軸を加味した6次元製造業に脱皮していく必要を講師訴えていると総括しました。
- 2018.11.13
第202回MINERVAビジネスプラン発表会に参加。
― 最初に(株)アグロデザイン・スタジオの西ヶ谷有輝社長から、2018年3月に創業したばかりの農薬開発ベンチャーとして、現在取り組んでいる硝化抑制剤の開発、他の開発の話がありました。本抑制剤は地中の硝化菌の持つ窒素肥料を分解する機能を抑制するよう設計された分子標的型の農薬で、現在使われている硝化抑制剤(DCD)に比して散布量が圧倒的に少ない殺菌効果を有するとのことでした。創業者の同社長が東京大学及び農研機構での研究から産み出したもので、海外の化学・農薬会社へのライセンス料を収入するとの事業計画でした。農薬分野のベンチャーは同社長も言われるように他に例はなく、奮闘を期待したいと思います。2社目は、(株)DIAMOND中村元鴻氏から生活習慣病の治療改善を目的とする医療補完的サービスをオンラインで提供する計画の話がありました。3社目は、アルファウォーター(株)皆川光雄氏から同社の超純水=超臨界水の製造販売の計画の話がありました。現在、ベンチャー企業にとってはCVC等の動きもあってフォローの風が吹いていると思いますが、そのせいか、本ビジネスプラン発表会への参加者は先月に続き非常に少なく、残念でした。
- 2018.10.29
富士通 経済研セミナー「中国の自動車産業の最新動向と将来展望」に参加。
― トヨタのシンクタンクであるとの現代文化研究所呉保寧上席主任研究員から「中国自動車市場とグローバルメーカーの競争戦略」のタイトルで、富士通経済研究所金堅敏主席研究員から「CASEに向けた中国の自動車産業政策と企業動向」のタイトルで講演がありました。Connected Autonomous Shared Electric、即ち、エンジン自動車ではキャッチアップが困難な中国が電気自動車において一挙にトップに立ち世界標準も確立するとともに自動運転のモデル都市を建設しようとの動きについての内容でした。個々には触れませんが、改めてドイツ自動車メーカーの中国市場での動きの早さと速さに驚きました。現世代の自動車では早期に進出したVWが中国内だけのブランドを持ちサンタナやジェッダの保守部品が地方での標準になっている。更にはEVについても中国ベンチャー企業とドイツメーカーとの協業も進んでいるとのことであり、巨大市場におけるデファクトな標準を押えようとする(単独ではなく現地資本と組んで)ドイツ企業の戦略を改めて認識しました。別の資料でベトナムにおいて、ドイツ企業が同地で成長しつつある民族資本と組んでアッセンブル工場を立ち上げようとしている動きがあることに触れていましたが、ドイツ民族の保守的なようでリスクを取って先を走る国民性がどこから生じているのか興味を感じています。
- 2018.10.17
日独スマートモビリティ・シンポジウム‐イノベーションが息づくドイツNRW州‐に参加。
― NRW州の経済・イノベーション・ディジタル化・エネルギー省ピンクヴァルト大臣が参加して、EV、パワートレイン、充電インフラ、自動運転、安全性の未来を議論し、相互の具体的な交流を進めようとするシンポジウムでした。3部のうちの1部だけ出席しました。ドイツの企業として、アーヘン工科大発の小型EVのベンチャーであるe.Go Mobile社のクルム会長から真に必要な機能だけを持たせたシンプルで軽量のEVの開発製造の紹介がありました。ドイツの都市は総じて人口は小さく(アーヘンは24万人)通勤圏も広くないので、このような小型の電気自動車がコミュニティに相応しいと思いました。同大は250万平米のキャンパスに250の企業が活動し毎年50の新規起業を産み出し1万人が働いている一大コンプレックで同大の総投資金額は2000ミリオン・ユーロとのことでした。同社の資金調達額35ミリオン・ユーロはその極一部になる訳で、本年7月に開いた日本開発工学会第3回「技術系中堅企業への壁」研究会で講師の永野氏が説明されていた通りの日本の水準を超えた産学連携と企業創出が実践されていることを改めて感じました。ドイツの企業2社目は、テュフ・ラインランド社のフピ会長から新規技術が産み出す新規事業の安全性を第三者的同社が評価しコンサルすることで社会受容と事業立ち上げの加速を図れることの説明がありました。このような立場で活動する企業は日本では無いと思いますので、ユニークであるとともに日系企業等の進出には有効だと思いました。短時間の滞在でしたが非常に参考になりました。
- 2018.10.9
第201回MINERVAビジネスプラン発表会に参加。
― 最初にBi2-Vision(株)の村上 隆一氏から同社の代表で技術開発責任者である張 暁林氏が開発したステレオカメラの左右画像情報から3D空間を再構築するLeadSenceの説明がありました。同社は張 暁林氏が起業しTEPの元代表の村井氏も参画している東工大発ベンチャーですが、現在同氏は中国に帰国し主に中国科学院で眼の構造・機能の研究を続け中国科学院発ベンチャーEyevolutionも起業しているとのことでした。同社が東工大のベンチャープラザに入居しているときに一度張氏には会っていますがまだ開発途上でした。現在技術は商品化されて、室内と室外に対応してロボット、AR/VR、ドローン、3D追跡に幅広く応用できる知能ステレオ視覚センサーであるとのことでした。2社目は(株)新潟鯉グローバル の樹神太郎氏から、新潟産の錦鯉の稚魚をハワイで養殖しニューヨーク、ニュージャージー、フロリダ州で販売している同社の事業を米国で多店舗展開を行う計画に要する資金調達の説明がありました。3社目はエーエムイー(株)の高橋信一氏から体表面に装着する反射型光センサを用い、呼吸変動を包含する抹消脈波変動の測定・解析により、睡眠時無呼吸の検出、睡眠状態の解析(睡眠の質の判定)ができる簡易睡眠モニターの説明がありました。前回と違い残念ながら参加者が少なく少し寂しい201回でした。
- 2018.10.5
TOKYO PACK 2018に参加。
― 久しぶりにビッグサイトに行きました。今回は包装がキーワードの展示会でした。包装という言葉から単に商品を包み込む機械の展示かと思っていましたが、予想外に、食品加工と計量と直接包装、加工後の冷凍・冷蔵と保管中の外部包装、搬出後流通中の包装、包装表面への印字・印刷、等々極めて広範な要素技術をサイト全体で展示する大規模なものでした。色んなレベルでの「包装」が一段と精緻・丁寧に行われ包装すること自体に付加価値を如何に付けるかが競争の中心であるように思われましたが、飽食の時代と言われて久しく世界的にも食料と食品の偏在が大きくなり、包装材料の環境性実現がクリティカルな課題になってきていることを考えると、違和感を感じざるを得ませんでした。その中で、金属金型と同精度を有する木型を使って真空成型を行う(包装材料は樹脂になるが)(株)朝日化成のブースに興味を持ちました。また、ドイツのMULTIVAC社 やスウェーデンのテトラパック社も出展していましたが、日本では彼らの存在はそんなに大きいものではないような印象を受けました。
- 2018.9.19
富士通総研中国通セミナー「中国経済、イミテーションからイノベーションへの道」に参加。
― 柯 隆客員研究員からのプレゼンで、中国が今直面している中所得の罠を克服し、米国との貿易紛争を乗り越えるために必要なことは自主的な技術開発力を身に付け、その成果を経済社会全体に均霑するように仕組みを作っていくべきだとの趣旨と理解しました。過去、成長を齎した農村人口の余剰の先が見え、国内のインフラ整備も大きなところは一巡した現状において、国内債務の累積等に対応するために、国有企業の合併等の強化が進み民間企業が活動する市場の場が相対的に狭まっていると分析したうえで、重要なことは基礎研究を進められる仕組みを作り、真の国力の基礎を嵩上げするために少し時間を掛けていくべきだというのが結論のように思われました。中国自体が遭遇している難しさを改めて理解できた場と思います。
- 2018.9.14
IIP招へい研究者成果報告会に参加。
― 今回は、インドのロイドロー大学のMishra氏から「ブロックチェーンレシートと知的財産法:どのように保護するのか」との講演がありました。The Economist は9月1日号の技術特集でブロックチェーンと仮想通貨の問題点、課題を詳しく取り上げ解説しているところで、タイミングよく、特許法とどのように関係していくのか興味ある話を聞けました。Mishra氏が特に焦点を当てて説明したレシートとは取引情報そのものを格納した情報群であり、それ自体の法的保護をどのようにするべきかとの点では、不正競争防止法のトレードシークレットに近いものがあると理解しました。ブロックチェーンの考えそのものは、オープンソースで既に公知となっているので、何に利用するのかとのビジネスモデル特許として限定的に特許が付与されるべきと思いますが、この点について各国特許庁の考え方を比較していました。米国は従来から産業寄りの大胆な判断をしてきたと思っていますが本件も同様であり、インドが意外なことに厳格な基準を有しているとのことでした。米国に次いで出願の多い中国の審査基準等の考え方が知りたいところですが残念ながら説明は有りませんでした。ただ、同氏の本件に対する包括的な理解と熱心な説明に敬意を表したいと思います。基本的な疑問として、そもそもこのようなオープンソースで中央的管理者のいないソフトウェアが特許の対象となり独占を認めるのか、オープンソースであるので誰もがアクセスできると言いながらレシートに格納される個人情報・個々の企業情報にアクセスできない仕組みをどう理解すべきなのか、更にいったん格納すると削除できず追加しかできないとことを容認するのか等基本的な疑問が残ります。更には、The Economistでは、チェーンの処理には物凄い電力と予想外の時間を要するとのことですので、果たして、「公序良俗的」に社会システムとして馴染むものかどうかという疑問も感じます。色々考えることとなった報告会でした。
- 2018.9.12
大田区産業振興協会HWスタータアップセミナーに参加
― 従来の展示会や講演会とは毛色の変わった案内であり、深センでのハードウェアスタートアップの状況を話すという趣旨と理解して参加しました。実際には、(株)タイセーの岩城氏がチューターとなって、参加者3名一組でデザイン思考的な起業への道筋を模擬的に体験するというセミナーでした。2007年、8年頃にスリーテックの久野氏が主宰していた横浜Design Product Groupのモノ作りミーティングによく似た進め方で、慶応大のシステム・デザイン・マネジメントの理論にも近いワークショップでした。大手企業からの参加者も結構多く、一風変わったタイトルのセミナーに惹かれて参加して居たようです。ただ、大田区振興協会も伝統的な中小企業経営支援のメニューに欠けていた新規起業を後押しする活動を増やそうとしていることは良く分かりました。面白い経験でした。
- 2018.9.11
第200回MINERVAビジネスプラン発表会に参加。
― 2000年8月以来の積重ねで200回を迎えた発表会でした。最初は(株)クリアの清水氏から特許取得の節水バルブで、使い勝手を損なわず約15%節水できるシステムと節減経費からコンサルフィーを回収するビジネスモデルの説明がありました。冨山所在で既にベンチャーの段階を超え実績ある中小企業に成長してきている企業でした。2社目は(株)ファーストアセント服部伴之代表から、夫婦二人ないし単身の子育て世帯を対象に、育児記録から食事や排泄のタイミング予測を行い親に知らせる、赤ちゃんの泣き声から感情を推測し要求を知らせる等のサービスを提供する「パパっと育児@赤ちゃん手帳」の説明がありました。敢えて流行りのAIと言わないプレゼンが良く、核家族で子育て大変の親への時宜あるビジネスだと思いました。某大手脱サラの起業ですが技術の裏付けのあるソーシャルベンチャーとして評価したいと思います。3社目は(株)バルクの吉野氏等から、人材が定着しない中小企業向けの原因調査とコンサルのサービスの説明がありましたが、何が同社のコアなのか、何を中小企業にしたいのか理解の難しいプレゼンでした。最後に200回を記念して懇親会があり、突然の指名で冒頭に挨拶を頼まれました。スタッフの支えで長く続いてきたのは事実ですが更に会場を横浜駅以来提供しておられる岩崎学園の貢献にお礼を言い、神奈川から更に起業が増えることを期待する挨拶と致しました。
- 2018.9.7
第四次産業革命下における製造業の人材育成について(日独対話)に参加。
― 安倍内閣のロボット新戦略を民間産業界で進めるために作られたロボット革命イニシアティブ協議会が主催するセミナーで、ドイツのIG MetallのJorg Hofmann 氏から、ドイツ労働界も現在進行中の「ディジタライゼーション」が産業・社会を根本的に変えていく不可避の原動力との認識のもとに、ドイツ産業、個別企業、大手、中小を含めて何が変わるのか、何をしないといけないのか、変化を担う人材をどう手当てしていくべきか等、危機感に基づく行動を取っていることの話がありました。政府や大手企業側ではなく、組合・労働者側からの問題意識と変化への取組みが示されたことは大きな驚きでした。先般7月26日に開いた日本開発工学会第3回「技術系中堅企業への壁」研究会で政策研究大学院大学永野氏からもドイツの中央・地方でのディジタライゼーションへの取組みの紹介と人材育成・研修・職業訓練の仕組みの紹介がありましたが、改めてドイツ全社会が意欲的に取り組んでいることが良く理解できました。その後、日機連で活動している山藤氏から日機連での勉強会の概要が紹介されましたが、大手企業での取組みと企業内OJT中心の対応、人材育成に留まっている印象を受けました。日機連の性格上止むを得ない点は有りますが、我が国が「ディジタライゼーション」がもたらす製造業の根幹への変化にどう対応していくのか見えない点は残念でした。我が国では大体個別最適の議論が中心になってしまいますが、本件も企業単位での単なる「デジタイゼーション」(Digitaizationデジタル変換)の枠を出て行けないのではないかと危惧を感じます。
- 2018.9.7
ゲーテ・インスティトゥート東京主催PASCH10周年記念パーティに参加。
― ドイツ政府はドイツ語を教えている世界中の高校と、PASCH(Partnerschul-Initiative)プロジェクトとして、最終的に世界120国1700校と協力関係を作り上げていこうとしているとのことで、我が国の参加校4校の高校生達が集まって、この10年間の語学経験、ドイツ訪問経験を語る場として開催されていました。初めての機会で好奇心から参加しましたが、同日たまたまドイツのIndustry4.0に関しドイツ社会挙げての「ディジタライゼーション」対応の話を聞いたばかりでしたので、非常に興味深く高校生のドイツ語のプレゼンを聞きました。日本はわずか4校の参加ですが、大使も出席しての式典で、同国の力の入れ具合が良く出ていました。4校は木更津工業高等専門学校、都立北園高等学校、早稲田大学高等学院、独協高等学校で、我が国とドイツの製造業との近似性、ドイツにおける体系的な職業訓練制度に近い我が国の高専のことを考えると、もっと高専からの参加があっても良く、残念に思いました。
- 2018.8.30
IIP招へい研究者成果報告会に参加。
― 久しぶりに参加をしました。今回は、韓国の忠北国立大学法学部教授等幅広い活動をされているシン・ヘウン女史から「パテントリンケージ制度に関する比較研究と今後の動向」についての報告がありました。韓国では韓米FTAの締結の際に米国からパテントリンケージ制度の導入を強く求められた訳ですが、今回のTPPにおいても米国が強く主張している同制度について、実態、運用、米国の意図等について体系的に話を聞く良い機会となりました。医薬発明に関しては物質特許の重さと、医療・健康増進の政策的重要さが常に争点になりますが、米国では、開発に巨額の資金を要する先端的革新的な医薬の開発と、医療費低減のためのジェネリック医薬の利用促進のバランスを取るため、新薬(ジェネリックを含め)の利用承認を求める際に関連する特許権の有無を併せて申請し、両者の間で必要な特許権に関する調整をするためにパテントリンケージ制度が立法化された経緯があるとのことでした。従って韓米FTAを受けて韓国国内法を改正し、ジェネリック等の開発研究は既存の特許権を侵害するものではないことを明記するとともに、特許権の調整の過程で特許無効審判等を争ったジェネリック開発者には優先販売品許可を与える仕組みを作ったとのことです。米国の制度については、特定の利益団体の意向が議員立法化され易いと思っていましたが、それなりにバランスを取った仕組みとなっているとの印象を受けました。同教授の我が国の制度への指摘は、特許法の5年の権利存続延長の仕組みは合理的とする一方で厚生労働省の新薬審査制度が通達レベルで設計され、かつ真に特許権の侵害の事実がるかどうかの判断に専門家が関与できているのか等制度設計と運用についての疑問が呈されていました。
- 2018.8.21
JST神戸大学新技術説明会に参加。£
― 神戸大に設置されている先端膜工学センターに絞っての技術説明会でした。同センターは2007年に設立された日本で最初で唯一の総合的な膜の研究開発拠点ということで、有機・無機膜、気体・液体の分離等の化学的反応、電気・電子的な物理的反応等、薄膜横断的な理論から応用までを扱っているようです。確かに研究機関のリソースが限定されている現状において、このような集約は限界を打破できる可能性を有しているのではないかと感じました。かっての海水の淡水化の浸透膜の時代から相当進歩し、分子単体レベルで選択的に様々の混合物(有機溶媒から有機物を選択する等)から目的物を分離取得する極小レベルでの膜の設計と合成を目指す技術の説明がありました。一方で、セラミック体を設計合成して同様に目的物を分離取得する技術の説明がありました。電気・電子的な分野では振動エネルギーを電気化して人工心臓のIoT端末の電源化を目指す有機膜の開発、光エネルギーを電気化して化学反応を進める有機物光触媒の設計等の説明がありました。実用化に近いモノから基礎研究段階のモノが一緒に説明されており、センターのユニークさを示す一方で、ミスリードを生じさせそうな特色ある説明会でした。
- 2018.7.26
日本開発工学会第3回「技術系中堅企業への壁」研究会を開催。
― 今回は政策研究大学院大学の永野 博氏を講師に迎えてドイツのMittelstand等ドイツを支える中堅企業、それらを地域で支える産学連携機関、研究機関・教育機関・人材養成機関の話をして貰いました。同氏は大学時代の留学を含めてドイツ滞在が3度のドイツ通であり、ドイツは当然ですが国内にもドイツ関係の広いネットワークを有しておられ、見聞きし肌で感じられたドイツ事情を語って頂きました。ハーマン・サイモン著の「隠れたチャンピオン企業」においても地域(小都市のコミュニティ)に根差したグローバル企業の実態が詳説されていますが、専門大学(日本の高専の大学版)が地方都市に多く230校存在し、連携の中核となるシュタインバイスセンターは1000カ所有って専門大学と関係は強く、更にデュアルシステムとしての人材養成・訓練の仕組みがこれら専門大学や地域の連携機関と一体となって構築されていることが説明され、更に、専門大学・連携機関・人材養成機関は地域の中堅企業のニーズと密接に関係していることも実例での説明がありました。将に、地域から中小企業・中堅企業を産み出す仕組みがあるとともに、企業はグローバルの市場を向いて激しい競争を行っている訳で、残念ながら我が国との距離の大きさを改めて感じることとなりました。経営面でも、事業承継を容易にする税制、伝統と革新を一体化した同族経営を可能にする公益財団株主制度等、我が国が参考にすべきモノは多々あるものの、彼我の差の大きさが浮かび上がる結果となりました。目下の我が国のドイツへの関心の高さを反映して、参加者も非常に多く活発な意見交換が出来ました。
- 2018.7.19
慶応SDM研究所シンポジウム「未来のモビリティと協生する」に参加。
― 久しぶりに同研究所のシンポに参加しました。国際自動車ジャーナリストの清水和夫氏から、本格的な自動運転に対応した欧・日・米の共同の規制見直しの動き、各国自動車メーカーの取組み、日本各地での自動運転の実証試験等の現状の詳細な説明がありました。将に本格的な自動運転が実現しようかという段階の直前にあることが良く分かる内容でした。また、MaaSの語が膾炙してきている背景として具体的な自動運転によるサービスモデルやこれに関する実証試験等の紹介がありました。同氏は、内閣府で進められている関連法規の大改正のアドヴァイザー的立場にあるとことで、内外の諸情勢が体系的に説明されていて感服しました。次にscheme verge代表の嶂南達貴氏からモバイル可能な空間を増やし地方を活性化する試みについての考えの説明がありました。移動の便利さ(究極的には自動化)だけでなく、生活空間を充実させないといけないとの視点に異論はないものの、高齢化、過疎化、所有者不明の土地・住宅の急増等の課題に迫られている我が国の解決のために「移動」がどのように役立つべきか、どのように働くべきか、さらに掘り下げた考えが聞きたいと感じました。それにしても、慶応SDM研究所のシンポジウムは何時も刺激的だと思います。
- 2018.7.17
富士通総研中国通セミナーに参加。
― 柯隆客員研究員による「中国経済の正念場―米中貿易摩擦の行方と習近平政権二期目の政策課題」の講演を聞きました。大きな眼で現下の中国を見ると経済的・政治的な課題は、農家に生産請負制を導入した農業改革、工業分野の国有企業を改革しようとした工業改革、外資自由化と民営企業参入を進めた市場開放に続く自前の先端技術開発による産業の高度化をいかに円滑に進めるか(中国製造2025)というところで、トランプ大統領の登場によって貿易摩擦に直面してしまったということであり、政治的にも国内で雑音が色々生じているとの指摘がまずありました。同氏は従来から、中国国内で先端技術分野の自力開発が進むかと言う点では懐疑的で、今回も、基礎研究費の配分、ICTに偏った国際特許申請件数、深セン等主イノベーションを担う主要都市のダイバーシティ度(東京も低いが)と自動車工業等の部品産業の立ち遅れ等に触れていました。また、製造業のみならずサービス、物流等がバランスを取りながら発展し国民全体の所得が向上していくためには、経済活動の多様な側面での倫理的な価値観が同時に意識され向上していく必要があり(かっての我が国のエコノミックアニマル)、それには時間がまだまだ掛かる中で、19年には貿易摩擦の影響が顕在化し政治・経済面・社会面で不安定化していくのではないかとの指摘があったと感じました。先般の呉軍華女史の講演を併せ考えていくと穏やかならぬ先行きが予感されますが、欧州・中国との距離が縮むとも予測されるなかで、先日の日欧EPAやRCEPの動き、北朝鮮問題をめぐる日米の動き等々、政治・経済・社会が益々グローバルに関係しあう訳で、冷静な国際感覚が日本人に一段と求められていくと考えます。
- 2018.7.10
第199回MINERVAビジネスプラン発表会に参加。
― 最初は、沼津市に所在する静岡県のインキュベーション施設に入居する(株)イージステクノロジーズの霜村 金久氏からGPS情報と振動,衝撃,姿勢の情報を組み合わせて建造物、構造物、道路、路面等の状態監視を行いインフラのメンテや防災監視への展開を行う事業の説明を行っていました。2社目は、ユアスタンド(株)浦 伸行氏から集合住宅向けの電気自動車の充電設備設置事業とこれに付帯したスマフォ・アプリケーションによる予約・課金のサービスの説明がありました。最後にフラットーク(株)樫平 扶氏から受託開発企業として大手メーカー等からOEMで提供した製品の紹介とJTAGデバッガー他の自社製品の説明をしていました。今回は少し雰囲気が変わっていて、地方から大きな市場を睨んでビジネス展開をしている企業、受託開発を主軸にしつつ先端の技術動向に対応できる製品・商品開発を行っている企業と、特徴のあるプレゼンが2社ありました。EV向け充電設備設置に関しては、EVのマンション住民とのシェアを含めた付加的な形態が更に面白いのではないかと感じました。
- 2018.6.26
German Innovation Challenge-HighTech Startup Forum 2018に参加。
― 引き続いてのドイツ関連イベントへの参加で、在日商工会議所が主催して我が国の技術系ベンチャーを選抜しドイツ大手企業とのマッチングの機会を与え、最終的にベルリンでのマッチングの場に参加させようとするものでした。関係しているTEPの他、京阪神、福岡からのベンチャー企業7社が発表していましたが、ドイツの製造業(医薬も含め)に焦点を当てた技術開発型で完成度の高いベンチャー企業が選抜されていました。ドイツの産業界の関心のあり方が非常に明確であることと、それに応えられ得る若手の技術開発型ベンチャーの経営者が存在していることに感心しました。我が国おける技術開発型ベンチャーのイグジットの在り方については常に疑問と不満を有している次第ですが、先進的なIT系ベンチャーであればシリコンヴァレーへ、製造業向けのハイテクベンチャーであればドイツへ、と割り切ることが必要かとも思います。
- 2018.6.25
日独シンポジウム「働き方改革およびディジタル化と企業の生産性」に参加。
― 富士通総研とベルリン日独センターが主催しケルン経済研究所、在日ドイツ商工会議所協賛のセミナーです。ドイツの中堅企業に非常に関心を有している現在、前日のICTと生産性の問題意識に続いて、両国の生産性の認識の差や働き方の考えの差を勉強する良い機会となりました。最初は「働き方」に関して、三井物産白江女史から社内の勤務管理や休暇取得の仕組みの大幅な変更について、ケルン経済研バルト氏からドイツ製造業の35年に向けての生産性向上の取組みについて、富士通総研シュルツ氏からデンマークの一国総ディジタル化の取組みの紹介と教育組織を横断し企業研修とを結びつけていく継続的取組みの必要性について話がありました。後半は「ディジタル化」に関して、DMG森精機太田氏から買収したドイツ企業との融合の過程でドイツ的な働き方が日本側にも浸透し両者の生産性が向上してきた道筋について、クラウドワークス田中女史からフリーランサー・クラウドワーカー等の活用による受け手と発注企業の生産性の向上について、三菱ふそうトラック・バスのベック氏からドイツ企業からの日本企業改革とICT活用の社内教育等について、話がありました。一貫して感じたことは、企業が用意し提供するICTの社内ツールを使っている限り幾ら従業員のスキルが上がっても生産性向上の果実は結局企業側にのみ帰属することとなるのではないか、個々の労働者・従業員のスキルやケイパビリティの向上はパブリックなプラットフォームを如何に主体的に使って取り組んでいくかに依るのではないか、ということでした。各国において後者の途が阻害され意識されていないために、労働者が、一時的に果実分け前取得のためにストに訴えるか、それもなく非正規・定型職務に甘んじていくかの動きが続いているのだろうと思います。これに応えられる政治の仕組みと資本側の取組みを期待することは、無意味なのかどうか、重い問い掛けになります。
- 2018.6.24
日本開発工学会第一回研究発表会に参加。
― 所属している同会において、第一回目の試みとして、会員から小論文を公募し優秀なものを選定表彰して、会員の参加と意識を高めようとする発表会開かれました。NTTファシリティズの越智氏、竹中工務店の西野氏の発表を聞いて、当初の狙いがICTの活用により生産性を上げ顧客ニーズに的確に対応しようとする社内の試みが、結果的に、ICTが縦割りの社内組織を突き崩し、更には、社外のグループ会社や系列会社を跨って、横断的・融合的に顧客のニーズに対応できる仕組みを作り上げるに繋がることを感じ取れました。我が国の企業文化も組織も、個別縦割りですが、その壁を超えない限り競争力は実現せず、そのためには自己否定をしないといけないという、将に、イノベーションのジレンマのような問題提起を図らずも二人の論文は示唆しているものと思いました。
- 2018.6.21
NANOBICナノ茶論2018年度第2回セミナーに参加。
― 川崎市が設営している「新川崎・創造のもり」エリア所在のNANOBIC(Global Nano Micro Technology Business Incubation Center)で開催される先端技術の最新動向に関するセミナーです。従来から関心も有り、活動の一環として支援しているTSIのスタッフが関与していることもあり、参加をしてきました。今回は東大生産技術研究所 ナノ物質設計工学研究室溝口 照康准教授の「界面構造解析とナノ計測における人口知能技術の活用」とのタイトルの講演でした。多結晶物質の結晶界面・粒界は物質ごと、更には同一物質であっても極めて多様であり同一性はないが、界面の構造が物性に関わってくることから界面の分子・原子配列等の特定は極めて重要である。しかしながら個々の計測は不可能のであるので、一定の情報(電子顕微鏡、スペクトル等)から計算式を使いながら(機械学習)最適推計を行おうというものだと理解しました。極めて高度な内容で理解しきれませんでしたが、同センターに入居しているベンチャー等の関係者や外部企業の開発者から熱心な質問が出ていました。毎月このような最新の高度な内容の講演会を続けている秘密が今回の参加で一部理解できました。しかしながら、我が国のこのような基礎レベルでの大学・企業・技術開発型ベンチャー等の奮闘が成果になかなか結び付かない問題について、改めて何か手を打つべきだと考えました。
- 2018.6.19
JST横浜国立大学新技術説明会に参加。
― 最初に藤本 康孝氏から「人に優しい省エネルギーロボットアクチュエータ」として、3K複合遊星歯車の機構を使い動力伝達効率を最適化することで、1/100を超える減速比でも負荷側から容易に駆動させられ、順方向・逆方向の効率がとも90%を超えるギヤの説明をしていました。次に長谷川 誠氏から「常温での高結晶配向性セラミックス積層材料の形成技術」として、高温での焼結無しで緻密なセラミックス積層材料が得られるAD(エアロゾルデポジション)法の特性を有し更に原料粉体の低温(100℃程度)予熱を加えることで高い結晶配向性を実現した技術の説明をしていました。3番目の鷹尾 祥典氏は、「エレクトロスプレー型2Dアレイ高電流密度イオン源」として、10 kg級以下の超小型衛星の推進機となる超小型・軽量の高電流密度のイオン源の開発を説明していました。酒井 清吾氏から「マイクロ流体素子に適する高性能なプレーナー渦流ミキサー」として、平面円盤型の混合チャンバーに同一方向に旋回流を生じさせる複数の流体流入口を設け流出口をチャンバー中央に設けることで、液体・粉体を均一に混合するシンプルな流体ミキサーの説明をしていました。最後に跡部 真人氏から「高効率・高選択化を実現する革新的反応プロセスの構築」として、燃料電池等で開発が進んでいる固体高分子電解ユニットを諸々の化学反応のプロセスに適用できる条件を具体化し、常温・常圧で所要反応の基質・位置・立体選択性を電圧、電位、電流で精密に制御して化学合成を行う手法を説明していました。いずれも、現在の製造業を支える基盤技術を代替させるものであり、良くインパンクとの有る内容を集めたと思います。参加者は想像よりも少なかったですが、個別に実りある共同研究が進むことを期待します。
- 2018.6.14
MCPC第106回勉強会に参加。
― モバイルコンピューティング推進コンソーシアムのセミナーで久しぶりの参加でした。IoTと声高に言われ現実の適用が進んでいるにも関わらず、センサが取得した情報を如何に通信しあうかが見えて来ておらず、この分野の世界標準の動き、誰もが利用できる通信デバイスが用意されているのか、との疑問から参加しました。東大生産技術研究所 桜井 貴康氏からは、IoT向けにソフト・ハードのオープンのプラットフォームを目指すトリリオンノード・エンジンの開発の状況について説明がありました。低電力(ボタン電池あるいは小型ソーラー発電)で超小型(2cm角)、屋外環境仕様でセンサ取得の情報を公開の無線規格で飛ばせる同デバイスのを、NEDO資金を使って開発し来年の完成と公開(オープンに利用可能とする)を予定しているとのことでした。普及と利用事例を広げるために独自に研究会も立ち上げているとのことでした。早稲田大国際情報通信研究センター 石川 孝明氏からはIoTに対応するJPEGの拡張等の動きについて話がありました。同氏が国際的な活動は、主に静止画の遣り取りに関しての規格化の動きですが、Facebookを含めて膨大な画像がインターネット上を動いている状況とその遣り取りを何とか秩序立てようとする世界的な取り組みが理解できました。
- 2018.6.12
第198回MINERVAビジネスプラン発表会に参加。
― 最初の(株)プラントライフシステムズの松岡 孝幸氏からは、農家の勘と経験を解析プログラム化し、ハウス全体の光合成量・糖度・水分量の情報を植物が反射する近赤外光を感知する光学生体センサー1個で取得し投資を押えたハウストマト栽培での実績をもとに、メロン、お茶の栽培に踏み出すための資金調達の必要性を説明していました。優位性はデータ取得と処理だけではなく、サンゴを使った培地と大きく頑丈に育てた苗に有り、更にEC販売サイトを使って付加価値の維持向上を狙う売り方にもあるような気がしました。2社目は、(株)C&Vテクニクスの鵜飼 勝三氏から、オンサイトで瞬時に複数の有機系物質(疾病マーカー物質とされる呼気中のアセトン、メタン等)の検出・測定がきる分析器の一層のコンパクト化と精度向上を狙った新型機の開発等のための資金調達の説明がありました。真の可搬型(軽くて肩に下げて測定できる)が開発されると意義はあると思いました。3社目はシンクラド(株) 宮地 邦男氏から、光渦レーザ微細加工技術用いて製作する口径100μmの無痛のマイクロニドルの開発の状況を説明していました。有機系材料を使い体内で吸収分解される針の製造は理解できましたが、どのように薬液を所要量充填し針で移動させるのか全体の仕組みは全く理解できませんでした。応用が化粧品であったりインプラント手術用であったりで、焦点が当てられていない説明であったと思います。今回の3社は相当の大きな資金の調達を考えている割に、不要な情報が多く整理しきれていないと感じました。4社目は、(株)ネインの山本 健太郎氏からメールの音声通知等を行うウェアラブル機器事業の拡大のための資金調達の説明をしていました。社会的意義もあると思いますが、音声と文字の相互変換が確実に行えるのか、情報の選択をどのようにするのか等疑問は残りました。
- 2018.6.8
JST第118回CRCC中国研究会に参加。
― 日本総研の呉 軍華理事・主席研究員による「米中競争時代の幕開け」というタイトルでの講演でした。21世紀に入って一層進んでいるグローバル化が民主主義に依って立つ紛争メカニズムの形骸化や国境を超え自律的に動き回る資本の極大化を齎しており、米中間の競争はポスト冷戦時代の価値観が崩壊しつつあるポスト・ポスト冷戦時代における二大国の競争現象と捉えるべきだとのスケールの大きな指摘がまずありました。その上で、トランプ政権による米国一極主義は実はオバマ政権の後半には生まれていたものである一方で、習主席への権力集中も民主主義システムとは別の政治システム下で市場経済を進展させるための動きであると捉え、従って、新しい冷戦時代における両者の競合が国際政治を不安定と安定の間で揺れ動かして行くわけであるが、現実には両者に貿易面・国際金融面での依存関係がある間は揺れ戻しが働くがその先依存関係が縮小していくと何が起きるかは読み切れないと結論付けておられたと考えます。大局的なモノの見方が非常に重要であることを改めて教えられたと思うと同時に、我が国が現象面での短期の国内政治問題に捉われていることが極めて遺憾であり、一方、衆参両院における現在の安定さを日本にとって幸運と考えるべきだと思いました。
- 2018.6.7
RIETI BBLセミナー「地域金融機関の現状と望ましい地方金融の在り方」に参加。
― 神戸大学経済経営研究所 家森信義教授による地方金融機関3000人の支店長に対するアンケート結果の紹介と抱える課題の分析に関する講演でした。地方にける起業と企業の発展のために重要な役割を果たす地方金融機関の今後への期待を持っての参加でしたが、結論的には、量優先の貸し出し先獲得競争が行われている一方で、事業診断や事業計画評価による貸し出しを行える人材が育成できていないとのことでした。ただ、かっての担保至上主義からは脱却したとの結果でした。某静岡県の地銀の不正融資がこれらの課題を象徴している訳でその意味ではタイムリーな内容でした。同教授は信用保証制度の見直しにも関係されたのことで、融資と個人保証と自己破産との問題についても留意して今後とも研究活動をしていかれるようにお願いしたいと思いました。
- 2018.6.4
FRI経済研セミナー「米中貿易紛争に巻き込まれた『中国製造2025』と中国市場開放の最新動向」に参加。
― 金 堅敏主席研究員による講演でした。米中間で交渉が継続し情報が流動的であるにもかかわらず最新の動きを取り入れた労作でした。富士通総研のセミナーは金氏だけなく柯 隆氏の講演も非常に有意義で、同社の取組みに敬意を表します。人件費の上昇に伴い付加価値の高い産業にシフトさせようとする中国と、生産財や機能性新規材料に競争力を失っている米国とのぶつかり合いが表面的な紛争の理由となりますが、実質的には、生産財・機能性材料に優位性を持つ日本、ドイツが、両国の交渉の結果どのような影響を受けていくのかを、見極めていく必要があるということが講演の本質ではないかと思いました。米国に立地した外資企業の製品を中国に輸出することで米国の輸出増には繋がるので、日本の製造業、特に自動車や、生産財メーカーにはそのような選択もあるのだろうと、金氏の示唆に共感する部分もあります。より悪さの少ない選択かも知れません。その延長で、金氏の示唆の中で最も興味のあった点は、我が国の農業・食品加工産業が、原材料を米国等から輸入してでも中国や東南アジアに輸出していくプラットフォーム戦略を取るべきだとの意見でした。確かに、狭い日本市場だけの農業・食品加工産業での発想から抜け出し、対米、対アジアにもメリットのある選択かもしれません。それにしても、中国の市場経済への一層の舵取りと政治体制との矛盾に改めて、疑問を感じた次第でした。
- 2018.5.29
JST理化学研究所 新技術説明会に参加。
― 上口 賢専任研究員の「温和な条件下でアンモニアを合成する新しい触媒の開発」、高梨 宇宙研究員の「新しい数学的手法によるCT画像再構成法」、藤井 克司研究員の「ユーザーオンデマンド再生可能エネルギー供給システム」、小野田 繁樹専任研究員の「磁化のモノポール流の生成、検出と、磁性体磁化の低消費電力制御」の発表を聞きました。基礎科学に近い分野を扱う理研の性格上、このような説明会の場で共同研究の相手を一挙に求めようとする遣り方が相応しいのかどうか、疑問に感じながらの説明貸しでした。ただ、アンモニアの合成に係る新触媒の開発の件は、出口が見える案件であり、工業化に向けて前進して欲しいと思いました。
- 2018.5.22
第1回スマートモビリティフォーラムに参加。
― 活動の1つとして関わっているTSI(テクノロジーシーズイノベーション(株))のグループである日本戦略投資(株)が主催し、三井住友銀行が協力している勉強会兼マッチングの場で、初回の開催でした。最初に戦略投資の佐々木社長から、大きなパラダイム変化の中で、情報化・インターネットによるメッシュ化等が進み、人間の物理的な活動空間も従来とは大きく変わっていることを受け、モビリティに着眼したフォーラムを計画した旨の挨拶が有りました。特に印象に残ったのはドイツが日本の動きに関心を示し、今後ドイツのカンターパートとの意見交換も進めたいとしている点でした。講演は、名大の未来社会創造機構 青木宏文氏から「人がつながる“移動”イノベーションを目指したスマートモビリティ」のタイトルで、10年近い計画で、同一の高齢者の自動車実運転のデータを継続的に集め、トラブル解決とその予防のために運転サポート等何ができるか、将来的に自動運転に繋げる仕組みは何であるのか、というタイトルとは少し距離のある地道な取り組みの紹介が有りました。高齢者の自動車運転のトラブルを裏付けある実例の集積から説明されていくと、確かに怖いものがあり、大規模で健常者も対象とした自動運転システムの開発ではなく、コミュニティレベルで高齢者を支える仕組みの開発が非常に重要であることを認識しました。
- 2018.4.19
日本開発工学会第2回「技術系中堅企業への壁」研究会を開催。
― 第2回目の講師としては、シリコンヴァレーで数回起業し事業売却に成功された坂本明男氏から「シリコンバレーでの起業・経営経験から考える壁と克服の課題―工業化社会から知的情報化社会への脱皮―」とのタイトルで発表を願いました。同氏は元NECで、社員が夢中になり満足して仕事することが成功の源泉であるとの信念から独立し、ホロンテック、オーラライン、IPLocksを立ち上げ、現在はNewGrasを創業して日米の橋渡をし、同時にシリコンヴァレーでロボットに関するスタートアップの会長として活動中とのことで、その経験から、如何に時間が勝負のシリコンヴァレーで起業から200人規模の中堅企業にまで育て上げてきたかを説明して貰いました。徹底的に機能を絞りシンプルな製品を一刻も速く市場に投入する、マーケッティング会社を洗脳しクールで格好良いマーケットを創っていく、3から5年で100億円の売上げを越え3年前後で損益をブレーク・イーブンにし世界展開のシナリオも含めた計画を作る、この間200人の従業員、外部VC等に対し創業者が自ら前面に出て瞬時で直勘的意思決定をしていく、知的情報化社会ではこの計画の見直しと直勘による意思決定を一層短期間に行い創業者の責任と行動力でベクトルも併せていく等の問題提起がありました。それでも千三つの例え通り成功確率は高くはないものの、誰もがチャレンジできる世界であるとのことでした。トップが先頭に立って成長に向かうことが重要であることにも触れ、単にベンチャーだけでなく公開大企業においても同じであることを強調して居られました。
- 2018.4.10
第196回MINERVAビジネスプラン発表会に参加。
― 今回は4社からの発表でした。最初はトランクソリューション(株)の山下氏から、病院や介護施設向け姿勢矯正・歩行改善用リハビリ機器・健常人の体幹訓練機器として開発された『トランクソリューション』の説明がありました。既に自治体や病院等との導入・連携が進み事業モデルとしてはほぼ完成していると思われますが、更に積極的にパートナー(レンタル等による販促)へのインセンティブを明確にし、銀行等からの融資で事業拡大を図っていくべきものと感じました。2社目は桐生電子開発合同会社の木暮氏から近赤外線によるセンシングを基本とした体内糖バランス計の開発について説明がありました。先行の類似機器が多くあり差別化が難しいと思われるので、要素技術開発を活かし受託開発に特化した方が事業としては良いのではないかと感じます。3社目は、(株)レゾンテックの関沢氏から、電池が不要の電磁誘導方式のスタイラスペン、線描を認識する面センサー等の説明がありました。スマフォの本体に格納できるペンであることも強調していましたが、対象がスマフォでタッチ方式代替なのか、タブレットを使った教育機器的なものとするのか、面センサーの方が技術としてコアなのか、焦点が絞れていないと思われました。本説明会の主体である(株)TNPパートナーズはサムソンやエイスースとチャネルがあるので彼らの意見を聞く方が早いと考えます。4社目は、(株)スタジオルの山地氏から、楽器練習用スタジオのWeb予約プラットフォーム「スタジオル」の説明がありました。全国で3000社ある零細音楽スタジオを対象に個別のスタジオの予約方針を反映して即実行できるスマフォシステムで、ニッチであるものの確実にニーズのある分野を対象とした完成した事業だと思いました。
- 2018.3.15
VIA:アジアと米国の架け橋を目指すスタンフォード大発NPOを知る会に参加。
― 知人が主宰しているWAA(We Are Asians)の勉強会で、久々にシリコンヴァレーの話が有りましたので参加しました。かって、サンフランシスコから帰国した10数年前に同じくWAAでシリコンヴァレー事情を話したことが有りますが、講師の話を聞き改めて変わらない部分と変わった部分を感じました。講師はVIA(Volunteers in Asia)で長く活動している石田一統氏でした。VIAの創設者はDwight Clarkで当時はスタンドード大の教官で、同大の学生をアジア各国に送り交流を深めるNPOとして始まり、現在はアジア各国の大学生の受入れと米国学生の送込みの両方向で文化交流、医療分野交流、ソーシャルイノベーション交流等を進め、日本の幾つかの大学とも提携を行っていることでした。10数年前にスタンフォード大に出入りをしていた際にも活動している団体ですが、日本人学生の少なさもあり意識していませんでした。当夜の勉強会には日本の参加学生も顔を出し、時代の流れを大いに感じさせられました。サンフランシスコとVIAをハブにしての日本の学生とアジアの学生との付合いがさらに増え継続してくれることを期待します。変わらない部分では、米国のNPOに対する意識、ボランティアの取組み、多様性を前提とした社会認識等で、キリスト教の考えにも関わるのでしょうが、西海岸特にサンフランシスコとシリコンヴァレーの基本原理は変わっていないと思いました。
- 2018.3.13
第195回MINERVAビジネスプラン発表会に参加。
― 今回は3社の発表でした。(株)to Uの小椋真実氏から医師と患者をオンラインで繋ぎオンライン上で受診し医薬品や処方箋を自宅に居ながら受け取ることができるサービスについて説明がありました。2社目の(株)システムブレインの神田智一氏からは水道水を溶媒にしたガラスコーティング液を使い自動車の表面を洗浄保護する事業とコンクリートや木造の外壁等のカビ取り洗浄施工事業の説明がありました。3社目の(株)エスメド医薬の兼次眞貴子氏からはサプリメント・薬剤をゼリー入り一包化にし服用を安心・安楽に行うことを目的とするサービスの説明がありました。(株)to U については他の企業も同様の開発を行っており(株)エスメド医薬は初めて聞きましたが、高齢化が進めば必要となるものだと思いながらも、医療分野の規制や健康保険の仕組みとの整合性をどうしていくのか、毎回この分野のプレゼンを聞くたびに疑問に感じるところです。北欧3国等の高福祉国家におけるベンチャーの新技術との親和・摂合をどのようにしているのか知りたいところです。2社目のプレゼンについては技術の説明が余り無く理解できないまま終わりました。
- 2018.3.8
JST「先端計測分析技術・機器開発プログラム」新技術説明会に参加。
― テーマ横断的な説明会で早大、材料研、東大、阪大、名大、京大から分子・原子レベルでの画像処理、分析、解析を行う電子顕微鏡等の先端機器に関わる技術の説明がありました。極限的に微細化を追求し精度を高めて情報処理を行うこの分野は従来から競争力があると思っていましたが、一層その精緻化が進んだように思われます。その中で特にユニークと感じたのは東大生産技術研の酒井 啓司教授の液体・気体の粘性を極少量の対象物を非接触で簡易に計測できる技術とその小型応用計測機器「レオスペック」の説明でした。極めて地味な学術的な技術課題を素人が理解できるように説明しつつ小型で誰でも使える機器に具体化した点は特色が有り、大学発技術の移転と商業化と言う意味でもユニークだと感じました。
- 2018.3.7
富士通総研「デンマークにおけるデジタル・イノベーションの今」に参加。
― 在日デンマーク大使館投資部中島 健祐氏から、国家全体でIoT、デジタライゼーションを先進的に進めているデンマークが、世界から大企業等が参加して共同実証や蓄積データ活用の新ビジネス実証の場となっている状況について説明がありました。国土が比較的小さく人口も500万強である同国はコネクテッド社会の実現と徹底した情報化を目指しており、高福祉高負担のもと、いわば「揺り籠から墓場まで」の医療福祉の情報が蓄積され、経済活動面でもキャッシュレス化の進展によって様々な個客情報も蓄積されていることを受けて、海外の情報関連大企業がそれら情報を活用する実証実験のみならず新規の実ビジネスを他に先駆けて取り組んでいる状況とのことでした。また、後半は、オルボー大学イェッペ・アガー・ニールセン教授から、慢性閉塞性肺疾患 (COPD)患者を対象に地方都市で取り組んだ情報ネットワーク活用の治療とフォローのパイロットプロジェクトの成功を受け、スケールアップと国家レベルへの嵩上げを図った計画が政治・行政・医療機関・民間介護機関等の関係者の利害が錯綜して頓挫しかかった実例を経験に基づき説明していました。国家規模が小さく関係者が近接して存在しかつ資金も国家予算が先導して投入される同国においても現実の利害が多いに絡み合い調整に相当のエネルギーを要するとのことで、我が国における同種プロジェクトがやはり地域レベルに留まることが止むを得ないと思わせる内容でした。
- 2018.3.6
第24回NEDOピッチ会に参加。
― 何回目かのピッチ会でプレゼンテーター企業として、(株)シナモン、(株)カウリス、Laboratik(株)、(株)レトリバ、アースアイズ(株)の5社が、順次、非構造文書(データ)の構造化と解析・要約、インターネットへの不正アクセスの検出、slackに基づいた感情分析、音声言語・テキスト分析、挙動不審者の画像認識等の事業内容の説明をしていました。対象分野と技術は10年前からあるものでサービス概念も新しいものではないと思いますが、精度は上がってきているので実ビジネスに使われるようになったと考えます。それ自体結構なことですが、いわゆるピッチとは、起業直後ないし直前のスタートアップが開発計画に対する資金提供を求めて短時間のプレゼンをするものと思いますので、本会が資金調達もある程度済ませサービスも開始した中小企業の大手企業への営業の場となっている点に違和感を感じるとともに、技術内容もNEDOの案内資料にあるように特段AIと言う必要もなく、更にはサブテーマのFuture of Workとは関係のないサービスも含まれており、どういう基準で5社が選ばれたのかという疑問も感じました。
- 2018.3.2
Challenge IoT Award2017 ビジネスモデル発見&発表会に参加。
― 3回目の参加になります。通信側からのアプローチでスマフォ等を使って身近な便利さを基本にスモールビジネスの立上げに結び付くアイデア・プラン等の発表を行おうとするものです。日本各地の高専や専門学校の学生たちが主にプレゼンをしていました。東京でよく見られる事業発表とは異なり、素朴な感じで一挙にビジネスになるものは少ない印象でした。その中で、アイデアとしては社会性も高く広がりの在りそうなものが有りましたが、スポンサーの業種がやや偏っているせいか、資金を出してでも応援しようとする動きが少なかったのが残念でした。
- 2018.2.23
富士通総研中国通セミナー「中国経済の現状と先行き」に参加。
― 今回の講師は日本銀行国際局審議役(アジア関係総括)の福本智之氏でした。北京駐在も経験した中堅どころですが、日本よりも急速な高齢化が進むもサービス経済化と都市化の進展で農村人口を吸収しソフトランディングの可能性がある、同時に今や深センがシリコンヴァレーに並ぶイノベーションの中心となっているように下からの生産性向上の動きがGDPの低下をオフセットしていく、コストパフォーマンスの良い製品の生産と輸出が進み競争力は維持している、鉄・石炭の過剰能力の削減は予定通り進展しており、住宅の過剰問題は(都市化も進み政策的にスマートシティ等の旗を振っているので)調整できるだろう、急速に減少していた外貨準備も下げ止まっている等楽観的な見通しを示していました。その中で懸念として触れていたのは、企業(会社)の定款に、重要な事項を党に相談する等の文言を書き入れる事例が増えており、市場経済と政治統制との矛盾の進展が進む可能性についてでした。日銀と言う立場が影響しているのかもしれませんが、総じて楽観的な話が多かったのが印象的でした。
- 2018.2.15
第22回GPIC研究会参加。
― 技術を活かしビジネスに勝つをモットーとする研究会として、暫くは、自社の得意技術をコアにグローバル競争の市場で一定の地位を占めている企業のビジネス戦略の講演を聞くということとしており、今回は、計量・計測・分析技術をコアに、科学機器・自動車・半導体・環境プロセス・医用の分野で独自の地位を築いた堀場製作所の開発本部佐竹 司氏からのプレゼンが有りました。同社との最初の出会いは1987年頃に遡り、同社のコアとなっている計量・計測・分析の世界でしたが、排ガス計測分析で国際化を図り大きく伸びている時だと記憶しています。その後、現在売上約2000億円、従業員が世界中で7000名強、ROE11%強という中堅企業(中堅から大企業へとのところと考えるべき)に成長し、製品群約1000、国際シェアが100%近いものから30%程度までの製品を多く抱えるグローバルニッチトップ製品の集合体のような事業となっていると思います。一つ一つの売上げは大きくはない訳ですが計量・計測・分析は世界共通、業種共通のファンダメンタルなものですからマーケットは世界中にある訳で必然的なグローバル化の結果、日本人従業員は38%で他は欧米アジアと世界に跨り、当然それに対応する経営手法を取ってきているとのことでした。科学機器等5つの事業分野を縦軸に日本等3つのエリアを横軸にしてマトリックス経営を行い英語を共通とし、製品の開発リーダーには非日本人が就く方が多いというところまでグローバル化を進めて来ているとのことです。ニッチな分野のニーズ把握と製品化はボトムアップで従業員主体で進めることとなり現場主義を取って各国横断で開発チームを作る、会社全体のフィロソフィーとビジョンを明確にし研修を含めた公的な国際会議と日常のオペレーションの国際会議を開催して意思の統一と共通の目標を持つようにしていく、そのように理解しました。中堅企業とは何か、中堅企業に成長するには何が必要かを考えていますが参考になりました。
- 2018.2.13
第194回MINERVAビジネスプラン発表会に参加。
― 今回は4社の発表でした。最初はキュアコード(株)土田史高氏から、スマフォやタブレットを端末にした認知症予防のための頭の体操的トレーニングと早期発見を行うサービスの自治体向け提供について説明がありました。創業者は東京出身で冨山で起業し地域行政向けのシステム開発とIT関連サービスを行っている企業です。都会出身者による起業がさらに増えて欲しいと思う反面、スマフォ・タブレットが初期高齢者に使いこなせるのかどうか、自治体が提供するポイントの「景品」を「ふるさと納税」的特産品とリンクさせると地域で使われる公的資金の有効利用にもなるのではないか等もう一捻りが欲しいと思いながら聞いていました。2番目は神奈川県のマリアンナ医科大学難病治療研究センター発ベンチャーと言うべき(株)細胞応用技術研究所井上正範氏 から、同大の井上 肇特任教授が開発した牛胎児血清等異種由来成分不使用本人細胞表皮の大量培養技術を使う難治性皮膚潰瘍患者等に対する再生医療の臨床試験等に対する資金手当ての説明がありました。培養の効率性、使用成分等詳細の説明が無いため判断はできませんが、他の再生医療に比べるとリスクは少なくVC投資には比較的向いているとは思いました。この分野の国家資金投入の制度的な欠陥をいつも感じます。3社目は、かって訪問したことのある(株)シーク征矢直人氏から、従来のCATIA等の3D―CAD制作、企業技術者育成等の受託事業 から、一般人を対象とした講習事業、技術習得検定、海外拠点作り等の自主事業取組みとそのための資金手当てに関する説明がありました。最大の問題としてはCATIA等のソフトを提供する事業者との共存ができるモデル作りだと思いますが、地域の中堅製造業を含めニーズの高い技能者の育成に繋げる事業でありぜひ実現して欲しいと思います。最後はBtBマーケティングの分野で成果をあげてきている(株)エムエム総研萩原張広氏から、社内外の人材育成を行う企業内学校の様な組織を立ち上げるための資金手当ての説明がありました。この分野の知見は有りませんが、海外市場を考えた際には一挙にBtCを狙うのではなく海外の現地法人とどう組むかが重要となるので、この分野の人材をグローバル化の中で行っていく重要性があると思います。以上、中身のある4社でした。
- 2018.2.8
日本開発工学会第1回「技術系中堅企業への壁」研究会を開催。
― 層の厚い中堅企業群はグローバル化の時代において地域・地方の経済と雇用のため重要で必須の担い手であり、更に、中堅企業の発展は産業の活力と我が国の国際競争力の源泉であるとの根本的な認識から、特に技術系スタートアップから中堅企業へどのような壁を乗り越えて発展していけるのかを整理し、課題を纏めるべく研究会を立ち上げました。議論の視点として、シリコンヴァレー型、ドイツ“Mittelstand”型、我が国の脱下請け自立型を想定し、売上10億円・従業員20名程度の中小企業、売上30億から50億円程度・従業員50から60人程度の中堅中小企業、売上100億円程度以上・従業員100人程度以上の中堅企業へと成長していく過程での問題点をまず明らかにし、更に個別企業の経験からどのように壁を克服していくべきかを纏めていきたいと考えています。初回として、(株)トリプルワンの企画・管理部長である大屋 貴雄 氏から「技術系中小企業の成長戦略とその課題―企業内外の視点で感じたこと―」のタイトルで発表をして貰いました。同氏は福岡県庁でベンチャー支援等の業務に携わった後、技術ベンチャーの財務・営業等、知財ファンド担当者として活動し、現職に就いています。この間付き合ってきた中小企業と技術系ベンチャーとを比較しつつ、中小企業から更に一歩先の中堅どころの企業へ成長するためには、受託から研究開発能力を高めた自主開発へ、マーケティング・営業能力を高めて特定の下請けから多様な企業との付き合いへ、権限移譲と組織化を進め企業運営の考え方を変えてオーナーの一人経営からティーム経営へ等に踏み出すことが必要であり、そのキッカケとなるのは事業承継の具体化ではないか、との問題提起が有りました。今後に繋がる議論ができたことで、同氏に感謝しています。
- 2018.2.1
第22回おおた工業フェアに参加。
― 最近の傾向は、個別企業の出展が減り、大田の同業者のNPO、退職した職人達と思われる者のグループ等の出展が増え、更に他地域の自治体の出展も見られるようになったことです。これを積極的に考えれば、企業の縦割りを打破し地域の境界も超えた活動に広げて行く動きだと思われる一方で、既存企業の数も減りマンネリが進んでいることの反映とも思われ、大田の中小企業の活躍に期待する点からはやや複雑でした。講演は、富士通総研の柯 隆氏による「18年の中国経済の行方」を聞きました。格差が広がり高齢化に向けて貯蓄率が高い社会では消費は増えない一方で国内のインフラ整備の一巡、過剰設備のもとで国内需要は低迷していく、輸出主導のためには知財制度の整備によるR&Dの促進と技術力の向上が必要でこれには時間がかかるというものでした。深刻な指摘としては、納税意識の高まりによる歳入の増加とこれによる社会保障の拡充があるものの納税の基盤を広げて行くことは困難であることのことでした。一国の力にはハード面だけではなく友邦を惹きつける文化力・文明力が必要でこれの強化にも難しい点があるが、現在の40歳以下の世代には、従来とは異なる見方をする層が多く生まれているので、今後は変わっていくだろうとの結論でした。毎回同氏の講演は明確でインプリケーションが多いですが、今回も同様で、ある意味我が国の課題を聞いているようにも感じました。
- 2018.1.31
ドイツ文化会館―ドイツ写真家による築地プライド写真展に参加。
― 前開発工学会会長の中上氏に誘われ初めてドイツ文化会館のイベントに参加しました。直接の動機は、ドイツの中堅企業を扱ったハーマンサイモン著の「隠れたチャンピオン企業」を読んで以来高まっているドイツへの関心です。本イベント自体は文化交流の一環でドイツ大使館の文化部のスタッフが参加していましたが、基本はボラティアを含めた交流事業で、多くの人が写真を見、マグロの刺身を味わっていました。一つ、関心領域を増やせそうで、当会館のイベントにも顔を出していこうと思っています。
- 2018.1.30
JST新技術説明会‐先端的低炭素化技術開発(ALCA)に参加。
― 文科省が重点的に進める環境分野の技術開発領域であるAdvanced Low Carbon Technology Research and Development Programの発表会の後半に参加しました。岡山大学大学院環境生命科学研究科能年 義輝氏の「抵抗性誘導能を有する低分子環状ペプチド型病害防除剤」、広島大学大学院工学研究科の尾坂 格氏の「塗って作れる太陽電池の半導体ポリマー開発」、京都大学大学院エネルギー科学研究科萩原 理加氏の「中低温イオン液体を用いたナトリウム二次電池の開発」、理化学研究所平山量子光素子研究室の平山 秀樹氏の「高効率・深紫外線LEDの普及に向けて」の4報告を聞きましたが、後の2つが目標が見え実用化の道筋も見えてきている研究開発だと感じました。“ナトリウム電池”はリチウムの資源制約を打破して中温域でのナトリウムイオン液体を用いた安定稼働の蓄電池で、リチウム電池の性能を下回るもののハンドリングが容易と思われるので、据置型大容量の蓄電池として用途は大いにあると思いますが、現下はリチウム電池の供給過剰状態にあり、実用化の一歩手前で止まっているようでした。“深紫外LED”は青色LEDに比しうる発光効率を目指して開発を進めている途上であるが280nm以下の波長領域で実用化されると一挙に利用分野が広がるとのことでした。いずれにしても実用化されていくには企業との連携・共同開発が必要となりますが、ナトリウム電池”については既に我が国の有力大手との関係が長く続いていて、更に新規の共同研究相手先の企業が入っていくことが可能なのかどうか疑問に思いました。この辺りが大学から産業界への技術移転の難しいところだと思います。